第1章 東卍の参謀
ゴ ゴ ゴ
鈍い音が鳴るたびに、タケミっちはビクビクと肩を跳ねらせた。
ゴ ゴッ ゴ
何度も何度も叩き込んで、ようやくマイキーが満足して手を離した時……キヨマサの顔面は見る影もなく、血塗れボコボコになっていた。
キヨマサをドサッと地面に落として、グチャッとその頭を踏みつける。
「“喧嘩賭博”とか下らねー」
「東卍の名前落とすようなマネすんなよ」
マイキーがアタシ達の方を見て、「帰ろっか」と言って笑う。
「あ、ちょっと待って」
やる事思い出して、アタシは客席の方へ向かった。
不良達がアタシに道を開ける真ん中を通って進み、主催側の一人、昨日少しだけ話した集金役の不良の前に立つ。
「ねぇ、“それ”アタシにくれる?」
「あ……」
ビビって言葉も出ないソイツの手から、アタシは今日コイツらが賭けた金をもぎ取った。
「迷惑料として貰っとくね〜」
金なんて正直どーでも良いけど、東卍の名前使って集めたものがこんな奴らの自由にされるのは気に入らない。
ドラケンのガソリン代かマイキーのオヤツ代にでも使お……
「っオイ!」
ガシッ
「ん?」
マイキーのところに戻ろうとしたら、集金役の男に後ろから肩を掴まれた。
「それは俺らの──」
「うるさい」
バシッ ヒュッ
アタシは手を振り払い、そのまま男の顔面に拳を放ち……すんでのところでピタッと止めた。
「う…‼︎」
ドサッ
女のパンチなんて大した風圧もなかったと思うけど、男は気圧されて後退り、石段につまづいて尻餅をついてしまう。
「良かったね?アタシがマイキーより優しくて」
笑いながら言えば、男は「ひっ」と喉を鳴らして怯えた。
今度こそアタシは石段を降って、マイキー達のところへ戻る。
「馬鹿野郎、あの人に逆らうなよ!」
「ユウさんに逆らったら容赦なく潰されるぞ」
背後で不良達が話すのを聞きながら、アタシは口元に弧を描く。
「東京卍會参謀!佑川 和月!」
「女参謀〝ユウ〟……あの人の号令で、東卍の全部が動く‼︎」
やったね、アタシにも紹介文キタ!
「ケン、アイツらから金巻き上げたんだけど、いる?」