第4章 総長と副総長
呼吸を浅くしながら、タケミっちは二人を止めるために、恐怖を飲み込み口を開いた。
「何があったか知らないっスけど、喧嘩はダメっスよ!!!二人とも落ち着いてくださいよ!!?」
「オイ!」
ドラケンが、タケミっちの胸ぐらを掴んで持ち上げる。
「オマエ何様!!?」
眼前でドラケンに凄まれて、タケミっちは恐怖に閉口した。
(怖えぇ……無理だ。二人の喧嘩を止めるなんて)
「……」
その様子を見てたマイキーは、ドラケンに背を向け駐車場の方へ歩いてく。
(!わかってくれた⁉︎)
マイキーが向かう先を見て、アタシは「まさか」と息を飲んだ。
マイキーが向かった先には、タケミっちの物と思しき自転車が置いてあって、マイキーは何の躊躇もなくそれを片手で持ち上げる。
タケミっちが驚きのあまり「ぶっ」と吹き出した。
「マイキー君⁉︎それはオレの愛車の疾風号!!!」
タケミっちが止めるも、マイキーは容赦なく自転車をドラケン目掛けてブン投げる。
ガッシャーン
「あ゙ああ゙あああ‼︎」
ドラケンが避けたことで、自転車は向かいの外壁にぶつかって、無残に壊れてしまった。
「オレの思い出があああ‼︎」
タケミっちの絶叫が響く。
アタシは自分の口を手で押さえて、心の中で何度もタケミっちに謝った。
「テメー正気か⁉︎」
マイキーの行動にキレたドラケンが、手近なところに立て掛けてあった野球バットを手に取る。
「ドラケン君⁉︎それは、小4の時初めてホームラン打ったゴールデンバット‼︎」
「やんならトコトンだぁ」
ベキッ
タケミっちの悲痛な声は届かずに、ゴールデンバットはドラケンにへし折られてしまった。
アタシは自分の胸に手を当てて、ギュッと服を掴む。
「マイキー君!それはオヤジと初めて祭りに行った時の!」
バッコーン パリーン
「ドラケン君⁉︎それ必死で小遣い貯めて買ったスケボー‼︎」
ガッシャン ベキッ
「あああ‼︎」
タケミっちの悲痛な叫びが響く中、アタシは目元を覆って項垂れた。
もう見てらんない……本当にごめんね、タケミっち。
「…タケミチ、災難だな」
「あれは台風だ」
「過ぎるのを待つしかない。ナムサン」