第4章 総長と副総長
彼らのコントみたいなやり取りを眺めながら、アタシは食べ終わったスイカの皮を皿に置いてハンカチで手を拭いた。
向かいから、「あの…」と控えめに声をかけられる。
アタシが目を向けると、赤髪リーゼントの子が、申し訳なさそうに頭を下げてきた。
「すいません…アイツらいつもうるさくて」
「んー…まぁ、慣れてるから大丈夫だよ」
オシャレな子だな〜と思って見つめてると、彼は慌てたように再度頭を下げてきた。
「せっ、千堂 敦です」
「そっちのロン毛の子は?」
「山本 タクヤです」
「敦くん、タクヤくんね。よろしく〜」
「あーっ!また抜け駆けか!」
自己紹介してもらってすぐ、マコトくんと山岸くんがビシッとこちらを指さして騒いだ。
「みんな仲良いねぇ」
自然と、アタシはそう呟いてた。
マイキーとドラケンの喧嘩も、こんな可愛いレベルであってくれたならどんなに良かったか……と、軽い現実逃避に耽る。
ダメだな……やっぱ疲れてるわ、アタシ。
「オマエら元気だな」
ドラケンもアタシと似たような心境なのか、呆れたように呟いた。
それを「うるさい」と捉えたのか、彼らは、一斉に姿勢を正してドラケンに「すいません‼︎」と頭を下げる。
さっきまでの騒いでたのが嘘のように静かになった。
「…あ、あの!ユウさん」
「ん?なに、タケミっち?」
(彼らが勝手に)静まり返った空気を変えようと、タケミっちがアタシに話しかける。
「その…オレが倒れた時、ユウさんが病院まで運んでくれたって聞いて…あ、ありがとうございました!」
「あぁ、うん……というか、寧ろゴメンね」
「え?」
アタシが謝る事に、タケミっちは不思議そうな顔をして傾げた。
「タケミっちが長内に殴られて脳震盪になったのって、アタシがアイツ煽ったのが原因みたいなモンだったからさ」
「そんな…ユウさんは悪くないっスよ」
「まぁ確かに、余計な首突っ込んできたのはタケミっちの方だけど、一回はちゃんと謝っとかないとね」
「うっ!」
謝れてスッキリしたと、アタシは晴れやかな気持ちで麦茶を飲む。