第4章 総長と副総長
マイキーが稀咲を頼れば、稀咲の要求を飲まざるを得なくなって、愛美愛主の幹部である稀咲を東卍の隊長に……それもパーちんの後釜として迎えなきゃならなくなる。
そんな事になったら、ペーやんは勿論、参番隊の隊員達は黙ってないだろうし、それこそ内部抗争に発展しかねない。
アタシは東卍の参謀として、それだけは絶対に回避しなきゃいけない。
「まだ猶予あるけど、“その時”になってもマイキーの意思が変わんなかったら、アタシはパーを出所させる為に動く気でいる」
ドラケンに稀咲の事は話せない……もっと怒らせること必至だから。
「そうか……」
一言呟いたドラケンが足を止める。
アタシもつられて足を止め、視線をドラケンに戻した。
ドラケンはやっぱり怒った顔をしていて、その目はじっとアタシを見つめてる。
「それがオマエらの意思だっつーなら、東卍も終わりだな」
「っ!終わらないよ!」
静かにとんでもない事を言うドラケンに、アタシは咄嗟に言い返していた。
「アタシが終わらせない!例えこれから何が起こっても、ケンが東卍を辞めても、アタシが…っ」
そこまで言ったところで、アタシは言葉を引っ込める。
「違う……違う、そうじゃない……アタシは、二人に仲直りして欲しくて……」
ドラケンが辞めても、なんて……そんなの絶対ダメなのに!
「……んな辛気くせぇ顔、タケミっちに見せんなよ」
ドラケンはアタシから目を逸らして、再度タケミっちの家へと歩き出した。
「ケンだって、怖い顔してるクセに……」
アタシは一度深呼吸をして、心を落ち着ける。
その後、ドラケンの後を追って歩き出した。
◇◆◇◆
タケミっち宅に着いてお邪魔すると、上から話し声が聞こえてきたから、ドラケンとアタシは2階に向かった。
階段を上ってく途中にも、男の子の話し声が聞こえてくる。
「ゴメン、冗談だよ。タケミチが深刻すぎてさ」
どうやらタケミっちの友達も遊びに来てる様子。
「二人は喧嘩してるけど、いつもの事らしいよ?」
話の内容は……マイキーとドラケンについてかな。
「大体、マイキー君とドラケン君が、モメるワケなくない?」
話し声の先、タケミっちの自室と思しき部屋のドアを、ドラケンが躊躇なく開けた。