第1章 東卍の参謀
マイキーって、よく即座にアダ名思いつくよね。
「マイキーがそう言うんだからそうだろ?タケミっち」
「へっ⁉︎」
「マイキーの命名は絶対だからね、タケミっち」
(お、女の子…⁉︎)
自分でも理不尽なこと言ってるなって思うけど、東卍じゃこれが当たり前。
マイキーがタケミっちの前に屈み込み、彼の後頭部に手をやりその顔を覗き込んだ。
「オマエ、ホントに中学生?」
マイキーの言葉に、タケミっちは体を強張らせる。
「タケミっち、今日からオレのダチ‼︎なっ♡」
「へ⁉︎」
あーあ……マイキーに目ぇ付けられちゃった。
これから苦労するであろう彼に、アタシは心の中で同情した。
一方的な友達宣言をして、マイキーはタケミっちから手を離し、立ち上がる。
タケミっちは、まだいまいち状況が理解出来てない様子で、ただマイキーを見上げてる。
「大丈夫?立てる?」
「え…あ……」
アタシは、マイキーと入れ替わってタケミっちに手を差し伸べた。
タケミっちは、おずおずとアタシの手に自分の手を乗せる。
まだ遠慮がちなその手をしっかりと掴んで引っ張って、アタシはタケミっちを立ち上がらせた。
タケミっちは、目をパチクリさせながら、視線をマイキー、ドラケン、アタシの間に彷徨わせる。
うーん、まだまだ混乱してるね、可哀想に。
「…あ、あの…」
「ん?」
「えっと…あなたも、東卍の…?」
「うん。アタシも東卍の人間だよ」
タケミっちにニッと笑いかけて、アタシはマイキーの方を見る。
マイキーは……
「……」
さっきは無視したキヨマサのところに向かっていた。
「オマエが、“喧嘩賭博(コレ)”の主催?」
「は…はい!」
キヨマサに向かって、マイキーがニコッと笑う。
グチャッン
次の瞬間、マイキーの右足がキヨマサの顔を蹴り抜いた。
「あが…」
鼻先を目掛けたマイキーの蹴り上げは、たった一発でキヨマサの鼻を潰してしまっている。
ガッ
グラつくキヨマサを、マイキーはその髪を鷲掴みにして引き寄せ、真顔で見つめる。
「誰だオマエ?オイ」
うわ、コワー。
ゴッ
マイキーは、キヨマサの潰れた鼻に容赦なく拳を叩き込む。