第3章 東卍の危機
マイキーは、「ウチの交渉はオマエの仕事だしな」と言って一つ息を吐く。
「でも、パーを助ける為なら、そんぐらい……」
「待って待って、考えさせて。お願いだから」
アタシは自分の頭を抱えながら俯く。
考えても考えても纏まんない……頭爆発しそう。
「何で相談してくれなかったの……そんな話、いきなり言われても聞き入れられるワケないでしょ」
「だって、和月に言ったら怒ると思ったんだよ」
「怒らないよ」
「ウソ。幹部会議ん時だってすっげえ怒ってた」
「アタシは、マイキーとケンが喧嘩した事に怒ったんだよ。だってケンは……」
「今アイツの名前出すんじゃねえよ」
ピリッと、痺れるような空気に包まれる。
「っ、」
アタシが顔を上げると、マイキーは怒りを孕んだ瞳でアタシを見ていた。
「いや、この話の流れでその怒り方は理不尽過ぎ……」
「和月」
グッ
「!」
マイキーが、両手でアタシの頬を包み、無理矢理自分に顔を向けさせる。
鼻先が触れるような距離で、マイキーの双眸がアタシを射抜いた。
「……オマエは、どっちの味方?」
「!…そういう質問はっ」
「答えろよ」
真っ黒な瞳を鋭くさせて、マイキーはアタシを見つめる。
スルッと、頬の手が下りてアタシの首に触れた。
絞めるでもなく、ただ触れてるだけだけど、これは明らかな脅しだろう。
こんな事、アタシにする必要無いのに……
アタシは、マイキーの目を見返して、答えた。
「アタシは、マイキーの味方だよ」
「!」
「いつどんな時だって、誰が相手だって、絶対に」
マイキーの腕を掴んで、ギュッと握る。
「だから、そんな顔しないで」
「和月……」
泣き出しそうな顔をして、マイキーはアタシを抱きしめた。
強く抱きしめられれば、マイキーの体が震えてるのがわかる。
ドラケンに猛反対されて、アタシにまで怒鳴られて、怒るのと同時に怖かったんだろうな……
「オマエがアイツの味方したら、オレの部屋に閉じ込めて誰にも会わせないようにしてやろうと思ってた」
「なにそれ……」
マイキーは本気でやりかねないのが怖いところ。
「変なとこ臆病なヤツ……アタシがアンタと対立するワケないでしょ」