第3章 東卍の危機
これは、マイキーの話を聞いた時から抱いていた違和感。
金を使って出所させるなんて話、マイキーは勿論、東卍の人間の誰も思い付くとは思えない。
少なくとも、パーちんが逮捕されて1日も経たないうちに…なんて、明らかにおかしい。
「昨日、アタシやケンと別れてから……何かあったんじゃないの?」
マイキーはアタシから目を逸らして、重い口を開いた。
「……オレんトコに、会いに来たやつがいて……ソイツに提案された」
「それは……?」
「“稀咲 鉄太”ってやつ」
「──⁉︎」
アタシは、目を見開いて驚愕する。
「稀咲……⁉︎稀咲鉄太って、愛美愛主幹部の⁉︎」
マイキーが首肯するのを見て、アタシは開けてた距離を詰めてマイキーに迫った。
「アンタ、愛美愛主の言葉に耳傾けたってワケ⁉︎」
「稀咲は愛美愛主の人間だけど、オレらの敵ってワケじゃねえ」
「どういう事?」
マイキーは、ポツポツと順を追ってアタシに話してくれた。
稀咲鉄太は、愛美愛主の幹部……だけど、総長である長内のやり方が気に入らず、長く対立していた。
昨日の奇襲はもちろん、パーちんの親友の事にも関わっていない。
昨日マイキーに接触したのは、元々長内の奇襲を止めるために動いていたから。
「稀咲が来る前にパーは捕まっちまったけど、稀咲は金でパーの罪を無かった事に出来るって……」
「……稀咲の目的は?」
アタシの問いに、ピクリとマイキーが反応する。
「長内と対立してたからって、パーを出所させても稀咲自身にメリットがあるようには思えない」
善意で動くような男でもないだろうし、稀咲が東卍の為に動く理由は?
「マイキー……アンタ何か、稀咲に要求されたんじゃないの?」
「……稀咲は、東卍に入って、パーの代わりに参番隊の隊長になりてぇって」
「はぁ!!?」
予想外のぶっ飛んだ内容に、アタシは頭をブン殴られたような衝撃に襲われた。
「愛美愛主の幹部を、東卍の隊長に…⁉︎」
そんなん揉めるどころじゃない、ただでさえマイキーとドラケンの喧嘩って大問題が起こってんのに、こんな話……
「……それ、アンタはなんて答えたの」
「まだ返事はしてねえよ。参謀(オマエ)と話して決めるっつった」