第3章 東卍の危機
動かしにくい腕をモゾモゾと動かして、アタシはマイキーの頭を撫でた。
何度も撫でるうちに、マイキーの腕から少し力が抜ける。
「……落ち着いたら帰ろ。疲れたし」
「……まだ、一緒にいてえ」
「うーん……じゃあ、一緒に帰る?」
少しだけ体を離したマイキーが、アタシを見る。
「今日は、“少し前”に戻ってさ……一緒に帰ろっか」
「……うん」
アタシの言葉に、マイキーは嬉しそうに笑った……やっと、笑ってくれた。
マイキーはアタシの手を引いて、バブに向かう。
「いきなり行ったらエマに迷惑かけちゃうね」
「エマなら嫌がんねえよ。オレには負けるけど、エマも和月の事好きだから」
「おー、嬉しいこと言ってくれるね」
今日は、もうマイキーを休ませてあげよう……話の続きも、解決策考えんのも、全部明日のアタシに託す!
「和月は?」
「アタシもエマ好きー」
「エマじゃなくて、オレのこと!」
今の流れはエマのことでしょ、というツッコみたい気持ちは飲み込んで……
「好きだよ、万次郎」
「!…オレも好き!」
アタシはマイキーと笑い合った。
◇◆◇◆
佐野家に泊まらせてもらった翌朝……
マイキーの部屋のベッドの上で、アタシは目を覚ました。
マイキーは目が覚めても、アタシを離さずにずっと腕に抱いてる。
「ねぇ、万次郎……ケンとは──」
「アイツの名前出すなっつったろ」
「……」
一晩眠った後でも、マイキーの不安と怒りは冷め切らなかったみたい。
「……本気で対立する気?」
「……オマエも、もうアイツに会うなよ」
ギュッと、マイキーはアタシを抱きしめる力を強めた。
「勝手に会ったら許さねぇ」
勝手に会ったら……また部屋に閉じ込めるとか言い出すんだろうな、と考える。
「……じゃあ、アタシからもお願い」
「ん?」
「稀咲の話には乗らないで」
アタシがそう言うと、マイキーは驚いたような顔をした。
「パーを出所させたいなら、参謀(アタシ)にそう命令すれば良い。……他のヤツは必要無いでしょ」
アタシからもマイキーを抱きしめて、そのまま目を閉じる。
「………」
お互いの体温を感じながら、アタシ達はまた眠りについた。