第3章 東卍の危機
「普通、初対面の相手の傷痕について触れたりしませんよ。トラウマだったらどうするんです?」
「だって…あの時の三途、傷痕まったく隠してなかったじゃん。触れても大丈夫なやつだと思ったんだよ」
三途に暴言吐かれて、結局アタシもキレて、“あの”マイキーに仲裁に入らせる程言い争って……初対面の印象はお互い悪かった気がする。
今では、三途はアタシを参謀として尊敬してくれてるし、アタシも三途を伍番隊副隊長として信頼してるけど……
「こんな風に話せるようになったのは、三途を伍番隊に配属した時からだっけ」
「そうですね……あの時、オレはユウさんに──……」
何かを話し出そうとした三途が、その口を噤む。
「?」
じっと前方に目を見張る三途を不思議に思いながら、アタシも視線を前に向けた。
いつのまにかアタシの家が見えるところまで帰って来てた事に気づいて、そしてその門扉に凭れてる人影に気づく。
「え、マイキー⁉︎」
その人影、マイキーはアタシと三途の視線に気付いて、こちらに目を向けた。
三途はその場で、バッとマイキーに頭を下げる。
「お役御免のようなので、オレはここで失礼します」
「あぁ、うん。今日はありがとね」
頭を上げた三途は、最後にアタシに微笑んで、踵を返し去って行った。
三途の背中を見送って、アタシは視線を前方に戻す。
マイキーが、こちらに向かって歩いてきた。
アタシも同じく近づいて、数秒後に対面する。
「和月…何で三途と一緒にいんだよ」
「アタシが一人でいたから、心配して送ってくれたんだよ」
マイキーはいつもより暗い表情で、アタシに触れようと手を伸ばしてきた。
「和月…」
「ストップ!」
「?」
アタシは、ビシッと手を突き出して、マイキーがこれ以上近づいてくるのを拒む。
「今は、アンタとは冷静に話し合いたいの。くっつくのは後にして」
「………」
行き場を失ったマイキーの手が、力なく下された。
それを確認して、アタシは聞きたかった疑問を口にした。
「パーを出所させるって話、いつから考えてたの?」
俯いてたマイキーが、ゆっくりと顔を上げる。
「アンタが自分で思いついたの?それとも、誰かに提案されたの?」