第3章 東卍の危機
ポカンとするアタシを見て、三途は呆れたように目を細めた。
「4回目に肩掴んでやっとでしたよ」
「うっそ、マジか」
「マジです」
そんな状態を見られてしまった事に恥ずかしくなって、アタシは三途から目を逸らした。
「考え事してた、から」
「……会議の内容はあらかた、隊長から聞きました。大変な事になりましたね」
「めっっっちゃ大変!気が遠くなる」
見られた以上隠しても仕方ないから、少しだけ本音を溢して、アタシは石段から立ち上がる。
そのまま石段から降りて、三途に振り向き手を振った。
「そろそろ帰るね。三途もお疲れ」
「送っていきます」
「いいよ、まだ明るいから」
「それでも送ります」
三途が石段から降りてこちらに歩み寄り、アタシの目をじっと見つめてきた。
「オレに傍にいられるのが嫌なら、距離をとって後ろから見守る、でも良いですよ」
「…ストーカー?」
こんな綺麗な顔した男に見つめられたら、世の女の子はみんなイチコロなんだろうなぁ、とぼんやり考える。
「うーん、ストーカーは嫌かな」
「フフ…では、エスコートの方で」
アタシの答えに三途は軽く笑って、アタシにそっと手を差し出した。
お手をどうぞ、かな?
不良らしからぬ紳士のような仕草、イケメンにこんな事されたら世の女の子は(以下略)とまた考える。
「……三途」
まぁ、アタシ以外の女の子には、だけど。
「“それ”はやり過ぎ」
「!」
アタシは右手を上げて、ペシッと三途の手を叩き落とした。
少しだけ驚いた様子を見せる三途を横目に、スタスタと歩き出す。
「アタシが弱って見えたからって調子に乗んな」
「……すみません」
三途は一言謝って、その後は悪びれる様子もなく、アタシの隣について歩き始めた。
「ホントに着いてくんの?」
「東卍の参謀に、何かあっては事ですから」
「アタシにそんな心配要らないって、いつも言ってんのに」
アタシが鬱陶しがってるのを分かってるからか、三途は目を細めて笑う。
「オレが勝手にする事です。ユウさんはどうかお気になさらず」
なんとも意地悪そうな表情に、アタシの口からは諦めの溜息が出た。
「頑固なヤツ」
「不良ですから」