第1章 東卍の参謀
(まさか、こいつが…⁉︎)
やっぱりタケミチは知らない様子で、驚いたようにマイキーを見る。
彼と、今頭を下げてない客席の数人は、東京卍會のメンバーじゃない。
だから知らなくても無理はない……
「「「お疲れ様です、総長!!!」」」
このどら焼き好き男が、東卍の総長だなんて。
「東京卍會総長、佐野 万次郎‼︎」
「無敵の〝マイキー〟──東卍のボスだ!!!」
またバーンと紹介文が出そうな説明だこと。
こうなったらアタシの説明も欲しいんだけど、ない?なんて。
(こいつが、こいつが東京卍會のトップ、佐野万次郎!!?)
「マ…マ…佐野君!」
キヨマサの手下の一人が、目の前を通るマイキーに声をかけた。
「俺…参番隊の特攻やってます。赤石っす」
「……」
「うっ」
健気に挨拶する赤石に、マイキーは目もくれず歩いてく。
それをドラケンが押しのけた。
「邪魔……マイキーは、興味ねー奴とは喋んねーんだよ」
「折角挨拶してくれたのに、ごめんねー」
「あ…す…すいません」
ちょっと可哀想で、アタシが肩を叩いてやると、赤石は身を引いて客席に戻って行った。
多分、アタシじゃなくてドラケンの迫力に引いたんだと思う。
「……お疲れ様です」
スタスタと歩いてくマイキーに、今度はキヨマサが会釈した……けど、
「頭が高い」
「え?」
ドゴッ
アタシが呟いた瞬間、ドラケンがキヨマサの腹に蹴りを入れた。
「がっ」
「キヨマサー、いつからそんな偉くなったんだー?」
「総長に対して会釈だけとか生意気すーぎ」
キヨマサが苦しげに腹を押さえたことで、その姿勢が前傾になる。
「あ゙あ゙…」
「総長に挨拶する時は、その角度な?」
「は…はい!!!」
そんなやり取りにも気を留めず、マイキーはタケミチの前まで歩いて行ってた。
「あ…」
文字通り彼の目の前に立ち、マイキーは更にズイっと顔を近づける。
「あ……」
それに気圧されたのか、タケミチはドサッとその場に尻餅をついた。
「オマエ、名前は?」
マイキーが訊ねると、彼はマイキーを見上げながら、恐る恐る答えた。
「は…花垣武道」
「…そっか…〝タケミっち〟」
「へ?タ…タケミっち?」