第3章 東卍の危機
「圭介……何かあった?」
「……何もねぇよ」
何もないならその間はなにさ。
「……まぁ、言いたくないならいいケド」
アタシはまた溜息をついて、もう一度みんなの顔を見回した。
解散と言いながら結局、会議らしく話し合っちゃったな。
「今日はお疲れ様。みんなもう帰っていいよ。また連絡するね」
アタシが改めて解散をかけると、隊長達は各々歩き出す。
階段を下り始める前に、三ツ谷がアタシを振り向いた。
「ユウ、オレで良けりゃ送ってくぞ?」
「ありがと。でもいいや、まだ明るいし……ちょっと、一人になって考えたいから」
「そうか……気をつけて帰れよ」
「うん」
三ツ谷が下って、場地とスマイリーも下ってって、最後にムーチョが階段を下り始める。
一段目に足をつけたところで、ムーチョは振り向き、眉を寄せた顔でアタシを見つめた。
「ユウ」
「ん?」
「……万一、マイキーとドラケンが対立して抗争なんて事になったら、そん時は──」
「それは絶対にあり得ないから」
ムーチョの言葉を遮って、アタシは強く言い放つ。
「さっき三ツ谷に『大丈夫か?』って聞かれた時は、答えらんなかったけどさ……アタシが、大丈夫にする」
「………」
「だから心配しないで?伍番隊はいつも通りに、自分達の“仕事”に集中して欲しい」
安心させる為に、アタシはムーチョに笑って答えた。
「……ああ」
ムーチョは頷いて、再度階段を下りて行く。
その途中で、思い出したようにまたこちらを振り向いた。
「そういう話で言うんなら、ペーやんに注意しとけ。マイキーやドラケンだけじゃねえ……今、一番不安定なのはアイツだ。ほっとくと危ねえ」
「だよね……うん。ペーやんとも、ちゃんと話すよ」
厳しい顔をするムーチョに、アタシはコクと頷いた。
その後はムーチョの背中を見送って、アタシは神社の方へ戻る。
「ハァーあ」
拝殿前の石段に腰を下ろして、膝を揃えて、顔を伏せて、溜息を吐き出した。
「疲れた……」
まだまだ考える事やる事が山積みで、頭が参る。
マイキーとドラケンの蟠りを解消しなきゃだし、ホントにパーちんを出所させるのかも決めなきゃいけない……その場合の段取りも、ある程度考えておかなきゃ。