第3章 東卍の危機
「ゴメン…マイキー」
パーちんは、立ち上がったけど……
「ペーやん、参番隊を頼む」
その場から動こうとしない。
「オレ、自首する」
顔を上げたパーちんは、その目に涙を溜めていた。
「ユウ…」
「パー…ッ」
泣き出しそうな顔をして、パーちんはアタシを見つめ、くしゃっと笑う。
「アイツに、伝えてやってくれ……『もう大丈夫だ』って」
「パーがっ…アンタが言わなきゃ、意味ないでしょ⁉︎…だからっ」
喉が詰まる……アタシは何故か、「一緒に逃げよう」と言うことが出来なかった。
「オレは、いい…みんな逃げてくれ」
「ふざけんな」
マイキーはパーちんの元へ向かおうとするけど、ドラケンがそれを止めた。
「ボーっとしてんじゃねえ!」
「バカッ置いてけねぇよ!」
半ば抱えられるようにドラケンに連れてかれながら、マイキーは必死にパーちんへ手を伸ばす。
「パー‼︎一緒に来い!」
「みんな捕まっちまうぞ!」
アタシは、呆然としたままでいたペーやんの手を引っ張って、ドラケン達と一緒に逃げ出した。
「パー!!!」
マイキーの悲痛な声に、アタシは唇を噛む。
俯いたパーちんが、それ以上アタシ達を見ることはなかった。
◇◆◇◆
倉庫を裏口から脱出したアタシ達は、力の限り走って警察から距離を取る。
「あああああくそっ!なんでこんな事に!!!」
ペーやんの叫び声が、ズシッとアタシにのしかかる。
「アタシ……」
パーちんの想いは、アタシが思っていたよりずっとデカかった。
タイマンで負けたから刺したんじゃない……パーちんは、ただ長内を許せなかったんだ。
「アタシが……」
決戦なんて面倒な手段取らずに、さっさと参番隊に突っ込ませてあげれば良かった。
長内をとっ捕まえて縛り上げて、パーちんに好きなだけ殴らせてあげれば良かった。
「アタシが、間違えた」
アタシが一人呟いたのと、ほぼ同時……
(…やべぇ…意識が…)
ドサ
タケミっちが、倒れてしまった。
「タケミっち!!!」
パーちんに殴られて、長内に殴られた上に、この全力疾走……体力の限界が来たんだ。
アタシはすぐに引き返して、タケミっちの元に駆け寄る。