第3章 東卍の危機
「ユウ、オマエ細いクセによくパーちん支えてんなぁ」
「こう見えて力はあるんだよ」
男には負けるけどね、とアタシが話す横で、
「うぅ…」
パーちんが僅かに声を漏らした。
「あ、パー起きた?今さ、ここに警察向かって来てるから逃げなきゃいけなくて──」
ドンッ
「──は…⁉︎」
パーちんが目を開けたと思ったら、アタシはいきなり突き飛ばされた。
バランスを崩すアタシの体は、咄嗟に腕を伸ばしたペーやんに受け止められる。
アタシはワケが分からずに、ドラケンの方へ向かうパーちんを見つめる。
パーちんの手には、ナイフが握られていた。
「ッ、パー!!!」
戦慄したアタシの口から絶叫が上がる。
ドス
次の瞬間、パーちんが長内の背中へナイフを突き刺した。
「テメぇだけは許せねぇんだよ。長内」
「あ゙…あぁ」
力の限りナイフを突き立てるパーちんを、ドラケンがバンッと突き飛ばす。
「何やってんだよ、パー!!!」
アタシとドラケンの叫び声に、マイキーとタケミっちが振り返った。
マイキーの目に、立ち尽くすドラケンと、尻餅をついたパーちんと、背中を刺され倒れた長内が映る。
「パー…オマエ…っ」
「え…?刺した⁉︎」
「パーちん…?ナイフなんてどっから…?」
呆然とするペーやんの腕から抜け出して、アタシはパーちん達の元に駆け寄った。
「長内!!!長内!!!」
「ケン!!!揺らしちゃダメ‼︎」
アタシは長内の傍に膝をつき、口元に手をやり息がある事を確認する。
「大丈夫、死んでない……」
僅かだけど、まだ確かに息があった。
アタシの目は、長内の背中に深々と刺さったナイフに移る。
ポケットナイフ……愛美愛主のヤツらから奪った?
いや、違う……愛美愛主は長内以外誰も、パーちんに近付いてない。
用意してたんだ……パーちんは、ただ長内に復讐するために……親友の仇をとるために……
「長内君!!?」
「嘘だろ⁉︎刺しやがったぞ、アイツ‼︎」
ショックのあまり愛美愛主のヤツらも足を止める中、無情にもパトカーのサイレンの音はどんどん近づいて来る。
「逃げるぞパー!!!」
マイキーが、焦ったようにパーちんを呼んだ。