第3章 東卍の危機
ドラケンが、後ろのアタシを窺い見る。
アタシはコクと頷いて、口パクで「お願い」と伝えた。
ドラケンの視線が愛美愛主に戻る。
「テメーらの頭は、東卍(ウチ)のマイキーがノシた!!!文句ある奴いるかぁ!!?」
ドラケンの声に、愛美愛主から返る言葉は無い。
「いねぇなら──今日から愛美愛主は、東京卍會の傘下とする!!!」
(すげぇ…勝っちまった!)
隊員の誰からも、拒絶も無ければ否定も無かった。
(こうやって東卍はでかくなっていったのか…)
ドラケンが宣言してくれたお陰で、愛美愛主50人と戦う必要はなくなった。
愛美愛主を傘下になんて、パーちんは怒るかもしれないけど……
「許してね、パー」
ここを中途半端にしておくと、総長をノされた愛美愛主は東卍を恨んで、また誰かを傷付けるかもしれない。
パーちんの親友のような被害者を出さない為にも、この場を収めるには、これが一番の最善手だと思った。
その時、アタシ達の耳に倉庫へ近づくサイレンの音が届いた。
「ヤベ、警察(サツ)だ」
「え⁉︎ケーサツ⁉︎」
倉庫の外には愛美愛主のヤツらのバイクがあるハズだし、大声も外に漏れてた……近隣の住民が通報したのかもしれない。
「オレらの勝ちを祝いに来たのかぁ?」
呑気に言うペーやんに、マイキーが「ハハハハ!」と笑う。
「逃げんぞ!タケミっち!」
「は…はい!(なんでそんなにヨユーなの?)」
ホントはまだ愛美愛主と話す事あるんだけど、さすがに警察にパクられるワケにはいかないから、今日はここで解散かな。
「オイ、テメぇら!!!」
バラバラと逃げ出す愛美愛主に、ドラケンが怒鳴る。
「自分らだけ逃げよーとしてんじゃねーよ。長内に肩貸してやれ!」
「はっ、はい!」
うんうん、どんなクソ野郎でも暴走族の隊員なら、総長見捨てはしないよね。
(『抗争はキッカケに過ぎなかったんだ』……長内はああ言ってたけど、抗争は何もなく収まっちまった)
タケミっちは立ち止まって、ドラケンと長内を見ていた……早く逃げた方がいいのに。
(〝キッカケ〟…何か見落としているのか)
「ペーやん、パーちん運ぶの手伝って〜」
「おう」
アタシが呼ぶと、ペーやんがこちらへ歩いてくる。