第3章 東卍の危機
……それにしても、意外だったというか……
アタシは、地に伏せて気絶してる長内に目をやって、胸にある疑問に首を傾げた。
ボクシング経験者で喧嘩も強く、性格も好戦的で、自分の強さに自信を持ってる……長内は、不良らしい不良に見える。
パーの親友とその家族、恋人を、自分の手を汚さず部下に襲わせる卑劣な男……そんなイメージと、大分違った。
パーちんとタイマンでヤり合った長内なら、ムカつく相手は自分の手でボコしそうなものだけど……
「うーん……」
まぁ、今考えても仕方ないか。
アタシがそう考えを落ち着けた時、気絶してると思ってた長内の、片手がピクリと動くのが見えた。
バリンッ
「!」
手近に転がってた空の瓶を引っ掴むと、地面に叩きつけて割る。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」
その凶器を手に、長内はマイキーの背中へ突っ込んだ。
「長内!!!」
「マイキー危ない‼︎」
「え!!?」
ドラケンとアタシの叫び声が響き、タケミっちは驚愕に目を見開く。
パーちんを支えてるアタシは、動く事が出来なかった。
マイキーを庇うように、ドラケンが長内の前に出る。
「ケン!!!」
立ちはだかるドラケンにも構わず、長内は割った瓶を振るって襲いかかった。
「うらあぁ!!!」
「長内!!!」
タケミっちが叫んだ、その次の瞬間、
ガッ ドッ
「長内──」
ドラケンは、凶器を持つ長内の手を逸らして抑え、同時に長内の腹へ膝蹴りを入れた。
「テメーがなんで負けたか、教えてやるよ」
「あが」
「不良の道外れたからだ」
マイキーにもドラケンにも怪我がない事を確認して、アタシは「はぁぁぁ」と詰まってた息を吐き出す。
長内の手から力が抜けると、瓶は地面に落ちて砕けた。
「親襲ったり彼女レイプしたりよお、やってる事がクソなんだよ」
ドラケンが、愛美愛主の隊員達を振り向き、鋭く睨む。
「いいか⁉︎次、同じような事してみろ?オレらがとことん追い詰めて殺しに行くかンな⁉︎」
長内を一撃で沈めたマイキーと、凶刃を難なく抑えたドラケンに、愛美愛主は完全に呑まれてしまっていた。
「こいつらヤベー」
「マジで中坊かよ⁉︎」