第1章 東卍の参謀
息を切らしたキヨマサの攻撃が止まる。
タケミチはフラフラになりながら、それでも立ち続けていた。
「もう引けよ、タケミチ!十分気合見せたよ‼︎」
「引けねぇんだよ!!!!」
一際大きな声が、辺りに響いた……タケミチの声だ。
「引けねぇ理由が、あるんだよ!!!」
「アイツ……」
ボソッと呟いたマイキーは、タケミチの背中を見つめてる。
マイキーが何を考えてるのか、アタシには何となく分かった。
「東京卍會、キヨマサ…勝つにはオレを殺すしかねーぞ──絶っっ対ぇ負けねぇ」
タケミチのその背中は、どことなく“あの人”と重なる──
「バット持ってこい‼︎」
……バット⁉︎
感慨に浸ってた思考を引き戻され、アタシはドラケンとマイキーを振り向いた。
「二人とも、急ご」
「ああ」
「………」
アタシ達は足を早めてその場へ向かう。
「早くバット持ってこい‼︎」
タイマンのルールも忘れてバットを要求するキヨマサに、観客の不良たちも流石に引いてる様子。
「オイ、キヨマサー」
「あ?」
そこに、ドラケンの声が割って入った。
「客が引いてんぞー」
「!」
アタシ達の姿を見て、キヨマサの表情が変わる。
(誰だ?)
タケミチはアタシ達を知らない様子で、ドラケンを見る。
「ムキになってんじゃねーよ、主催がよー」
「金の辮髪、こめかみに龍の刺青(スミ)…うそだろ⁉︎」
「東京卍會副総長‼︎龍宮寺 堅!通称〝ドラケン〟!」
「プ。」
バーンと紹介文が出そうな客席からの説明に、アタシは思わず笑ってしまった。
「ねえねえ?ケンチン、ユウ?」
「あ⁉︎そのアダ名で呼ぶんじゃねーよ、マイキー」
「どら焼きなくなっちゃった」
空になった手をヒラヒラと振って、マイキーはにっこりと笑ってる。
「マイキー、空気読んで。あと食べかす付いてる」
「だってまだ食いたりねーし」
「あとで買えばいいでしょ」
バッ
ドラケンの後ろに隠れてたマイキーの存在に気付いて、客席の不良達が一斉に頭を下げた。
「総長、お疲れ様です」
「「「お疲れ様です!」」」