第3章 東卍の危機
「ユウ、パーを頼む」
「うん」
マイキーからパーちんの体を引き受け、アタシはパーちんの肩を支えながら、その片腕を持って自分の首に回す。
「重っ…」
パーちんガッシリしてるから重いけど、立ってられない程じゃない。
こんな重さに耐えるくらい、パーちんの体を地面につけるよりよっぽどマシだった。
「ちょっと待っててね、パー。もうすぐ終わるから」
アタシは、マイキーの背中を見つめながら、パーちんにそう呟いた。
「ふざけた事言ってんじゃねえぞ」
「オイ、マイキー!!!とりあえず土下座!!!」
「許さねえけどな!」
マイキーは、騒ぐ愛美愛主には目もくれずスタスタと歩いて行く。
「全員全裸で土下座な⁉︎」
「ションベンちびんなよ‼︎」
「ガキだからって泣いても許さないでちゅよー♡」
「おしりペンペンしちゃうぞー♡」
マイキーが、長内の前に立った。
「お?ヤんのか?マイキー」
パーちんとヤり合ってすっかり調子を取り戻した長内は、上がった気分のままにマイキーへニヤッと笑う。
(いくらマイキー君でも長内(コイツ)には…)
刹那
「10秒で殺してや──」
ド
長内のこめかみに、マイキーの蹴りが炸裂する。
「──る」
ゴンッ
マイキーは、長内のこめかみを蹴り抜くままに、その頭を地面に叩きつけた。
「え?」
隊員の一人が間抜けな声を上げたのを最後に、愛美愛主の全員が驚愕のあまり言葉を失う。
長内は、マイキーの一撃で完全に伸びてしまった。
「パーちんが負けたと思ってる奴、全員出てこい。オレが殺す」
静まり返る倉庫の中に、マイキーの声だけが響く。
「東卍は、オレのモンだ。オレが後ろにいる限り──誰も負けねぇんだよ」
長内を倒した……愛美愛主は驚愕に飲まれて動けない。
「……パーの勝ちだ」
パーちんを支え直しながら、アタシはホッと息をついた。
一時はどうなる事かと思ったけど、なんとかなった……
「ゴメン、ケンチン」
マイキーがドラケンを振り返りながら、「やっちゃった」と笑う。
ドラケンは一つ息を吐いて、「しょうがねえなぁ」と言って笑った。
さっきの険悪な雰囲気はもう残ってない……その事にも、アタシは安堵の息を吐く。