第3章 東卍の危機
(止めないといけないのに、くそ‼︎)
「タケミっち、黙って見てろ」
マイキーはパーちんへ目を向けたまま、後ろのタケミっちに話す。
「これは、パーの喧嘩だ」
マイキー怒らせちゃったし、タケミっちは殴られちゃったけど、結果的に長内をタイマンに引きずり出す事は叶った。
アタシも大人しく、パーちんの喧嘩を見守ろう。
マイキーの腕が離れても、アタシはその場から動く事はしなかった。
殺気立って睨むパーちん、ニヤニヤと笑う長内。
見合う二人……先に動き出したのは、パーちんの方だった。
「うらあ‼︎」
ゴッ
パーちんは長内へ突っ込み、拳を振るったけど、さっきと同様にカウンターを打ち込まれてしまう。
パンパンッ
続け様に二発打ち込んで、長内は素早く一歩距離を取った。
「つっ」
「ハハハ♡どーした」
トントンとステップを踏む長内を見て、パーちんは地面に血の混じった唾を吐きつける。
「てめっ…ボクシング囓ってやがるな…」
長内はボクシング経験者か……無駄の少ない身のこなし、重たい拳、確かに喧嘩だけで身につくそれより、ちゃんとしてる。
身長(タッパ)もある長内は、そもそもパーちんよりリーチが長いのに……動きも完全に上を行っていた。
アタシは、チラッとマイキーを窺い見る。
「………」
アタシが眉根を寄せてるのに対し、マイキーは表情を変えずに見守っていた。
ドッ
一際重たい長内の一撃が、パーちんの顔面に入る。
カクンと、パーちんの顔が首ごと揺れた。
「やべぇ‼︎モロに食らった」
ペーやんから焦る声が上がる。
パーちんは、膝に手をついて踏ん張り、体勢を立て直した。
パーちんの鼻と口から血が流れ、ボタボタと地面に落ちる。
「こんなパンチじゃアリも殺せねえぞ」
パーちんは強気に言うけど、その体勢は明らかにフラついていた。
(やばい、意識がとんでる)
「そんな…一撃で…⁉︎バケモンかよ、長内…‼︎」
ペーやんが、「パーちん‼︎」と叫びながら二人の元へ駆け出す。
「ペー‼︎」
それを、マイキーの声が止めた。
「黙って見とけっつったよな?」
「……ゴメン…マイキー」
ペーやんは足を止めたけど、その表情は焦ったまま。