第3章 東卍の危機
長内を煽って、煽って、煽って……アタシに怒りを向けさせろ。
「決戦すんのが怖いから、奇襲なんてセコい手に出た」
長内に先に手ぇ出させろ……ヤツが隊員達に号令かける前に、タイマンに持ち込んでやれ。
「“格下”相手に待ち構えてることも出来ないなんて、どんだけ臆病なのよ」
青筋ピクつかせながら、アタシにくっさい紫煙を吐きかける……長内の怒りは限界寸前。
次でトドメだ。
「何でアンタみたいな“小物”が、愛美愛主みたいなデカいチームの総長やれてんのか、不思議でしょーがな──」
ガシッ グイッ
「──いっ⁉︎」
いきなり、誰かが後ろからアタシの腕を掴んで、力強く引っ張った。
予想してなかった衝撃に、間抜けな声を出しながらアタシの体は後ろへバランスを崩す。
アタシの腕を思いっきり引っ張った誰かは、言わずもがなマイキーで、腕からパッと手を離すと、そのままアタシの腰に手を回した。
転ばないように必死だったアタシは、咄嗟にマイキーの肩を掴んでいて、はたから見ると抱きつくような体勢になってしまってる。
「生意気に見せつけてくれんじゃねぇか」
長内は一瞬呆気に取られてたけど、「マイキーちゃんは女守りたくて必死かぁ?」とこちらを煽ってくる。
マイキーは長内を無言で見返しながら、離れないようにアタシの腰をしっかりと抱き寄せた。
「ちょっと、何で邪魔なんか──うっ」
長内への煽りを邪魔されて、アタシはマイキーへ抗議の目を向ける。
けど文句は続けらんなかった……マイキーが瞳孔鋭く睨んできたから。
「オマエ、何やってんの」
声からもマイキーの怒りが伝わってくる。
「えと、長内を煽…」
「長内から一発もらう気だったろ」
ギクッ
「いやーはは……避ける自信あったから」
誤魔化そうとしてもマイキーの怒りは収まらず、腰の手はそのままに反対の手でアタシの顎を掴んだ。
「オレ以外の男に簡単に近付いてんじゃねえよ」
「……ごめ、ん」
動かしにくい口元をモゴモゴいわせ、アタシはマイキーに謝った。
確かに、“心配しないで”“怪我しない”“信じて”って言った、昨日の今日に取る行動ではなかった気がする。
「それと、愛美愛主に『好きにしていい』っつったこと…オレ何も聞いてねぇけど」
ギクギクッ