第3章 東卍の危機
目にいっぱい涙溜めて、そんな辛そうな顔してんのに、何でまだ止めようとするの?
意味のわからない嫌悪感に顔を顰めながら、アタシはタケミっちの手を乱暴に振り払う。
するとタケミっちは、バッとその場に手をつき、マイキーに向かって深く頭を下げた。
「オレ退けないっスよ!!!愛美愛主とヤり合ったら、東卍は終わります!!!」
どうして……
「せっかく、マイキー君やドラケン君やユウさんと仲良くなったのに‼︎東卍が終わるなんて、オレ嫌っスよ!!!」
愛美愛主との決戦は、タケミっちには本当に関係ない事のハズなのに、どうしてここまで……
「ちっ、ホントわかんねーヤローだな」
パーちんが、再度タケミっちへ拳を振り上げる。
ガシッ
その腕を、ドラケンが止めた。
「…何すんだよ、ドラケン」
「…タケミっちが退かねーって言ってんだ。少し、愛美愛主調べてみてもいいんじゃねーの?」
ドラケンの言葉に、アタシは眉根を寄せる。
「ケン……愛美愛主なら、アタシがもう調べた。知ってるでしょ?」
「それでも、だ」
ドラケンはアタシにそう言って、マイキーの方に目を向ける。
「マイキー」
「あ?ケンチン……オマエ、東卍に楯突くの?」
マイキーは、イラついたようにドラケンを睨んだ。
「あ?そういう話じゃねえだろ?」
「そういう話だよ」
二人の間に冷たい空気が流れる。
待って、何でマイキーとドラケンが険悪になってんの⁉︎
「ねぇ、ちょっと──」
「──内輪モメしてるトコ悪ぃーんだけどさぁ」
また違う声が、アタシ達の間に割って入った。
「今度は誰……は⁉︎」
声の主を見て、アタシはタケミっちが来た時以上に驚愕する。
「〝愛美愛主〟〝愛美愛主〟ってよー」
似合ってないリーゼント
「ウチの名前連呼すんのやめてくんねー」
目に痛い赤の特攻服
「中坊どもがよーー」
口から紫煙を吐き出しながら、ソイツはアタシ達の前に現れた。
パーちんが、ソイツの名前を呼ぶ。
「テメーは──長内!!!」
「騒ぐなチンカス」
愛美愛主八代目総長・長内信高。
「嘘でしょ……」
何でこんなトコに長内が来んの?
8月3日に決戦って宣戦布告したの、つい昨日の事なんだけど⁉︎