第1章 東卍の参謀
電話を切って、アタシは一つ溜息を吐いた。
勝手やった馬鹿へお灸据えるには、別にアタシだけで充分なのに……
「キヨマサ……可哀想なヤツ」
そう呟いてから、アタシはマイキーとドラケンとの合流場所に向かって歩き出した。
◇◆◇◆
予想以上に待たされてイライラすること数分、ようやくマイキーとドラケンの姿が見えた。
「やっと来た」
「和月〜」
「悪い、遅くなった」
ドラケンが軽く謝ってくるのに、アタシは「いいよ」と返す。
「こっちこそごめん、面倒なことに巻き込んで」
多分遅れたのは、ドラケンのせいじゃなくて……
「マイキー」
「なに?」
コイツのせいなんだろうな〜。
「その手のどら焼きは何」
「腹減ってたから」
「人を待たせといて買いに行ったワケ⁉︎」
「怒った顔も可愛いな〜、和月」
「アンタねぇ!」
怒るアタシにマイキーは悪びれる様子もなく、手元の袋を裂いてどら焼きにパクつく。
アタシがまた溜息を吐いたところで、ドラケンが「オマエら行くぞ」と歩き出した。
「ほーい」
マイキーとアタシもそれに続いて歩き出す。
マイキーはいつものように、ピタッとアタシの隣にくっついて歩いた。
「暑い。歩き辛い」
「手ぇ繋ぐ?」
「話聞いてる?」
もうやだコイツ、本当に人の話聞かない!
喧嘩賭博の会場である広場が見えて来た頃、
「処ッ刑‼︎処ッ刑‼︎」
昨日同様、耳障りな歓声が聞こえ始めた。
「殺せーー‼︎キヨマサ君!!!」
「え?キヨマサ本人がやってんの?」
昨日は下っ端闘わせて高みの見物してたのに、意外。
ドッ
「処ッ刑‼︎処ッ刑‼︎」
広場の中心に目を凝らすと、確かにキヨマサが対戦相手をボコってる様子が見て取れた。
ドドス ゴ ドゴッ ゴス
キヨマサの相手は、昨日相手の一撃で気絶してた金髪の子?
キヨマサに何度も打たれてんのに、今日は倒れず耐え続けている。
ゴ バコ ゴド ゴガッ
あまりに一方的な滅多打ちに、観客の不良達ですら言葉を失った。
「もういいってタケミチ!!!」
「マジで死んじまうぞ‼︎」
聞こえて来た必死な声は、彼の友人のものらしい。
タケミチ……それが彼の名前か。