第2章 参謀の仕事
「……万次郎」
いつもは家の中でしか呼ばない、マイキーの名前を呼んで、アタシは彼の背中に両腕を回す。
「今のアタシは、怪我一つしてないよ」
「…………」
「心配しないで、って言ってもアンタは心配するんだろうけどさ……約束したでしょ?アンタがいない所で怪我しない。ヤバい時は必ず逃げる。逃げられない時は、アンタに助けてって言う」
安心してもらえるように、アタシはマイキーの背中をポンポンと叩いた。
「だから信じて。万次郎と、東卍のために、アタシも戦いたいの」
マイキーは答える代わりに、アタシを抱く腕の力を強める。
この息苦しさを、マイキーの愛情そのものだと思った。
「……暗くなってきたし、そろそろ帰ろ?明日はパー達と作戦会議だよ」
「…うん」
マイキーはアタシの体を離すと、代わりにギュッと手を握る。
アタシ達はベンチから立ち上がって、手を繋いだまま歩き出した。
「愛美愛主への宣戦布告は、どうなった?」
「日時も場所も伝えたし、長内にタイマン張るようにも伝えた」
公園を後にして一緒に歩いてる途中、マイキーが愛美愛主について聞いてきた。
愛美愛主から汚い言葉かけられた部分は割愛して、アタシはマイキーに報告する。
「最後に『首洗って待ってろ』って言って、圭介と一緒になって中指立ててやったら、ヤツらめちゃめちゃキレてたよ。一人しつこく絡んで来た隊員がいたから、ソイツだけ圭介がぶっ飛ばして、ヤツらがビビったタイミングで帰って来た」
「ハハハハ!」
マイキーは一頻り笑った後、「ん?」と何か引っかかった様子でアタシを見る。
「ケースケって……今日、場地と一緒に行ったの?」
「!あー……うん」
しまった……マイキーに伝えんの忘れてた。
気付いた時には遅くて、マイキーは不機嫌そうに顔を顰める。
「ムーチョと行くんじゃなかったのかよ……」
「その予定だったんだけど、昨日の集会の後圭介が行きたがったから……ホラ、圭介って喧嘩っ早いヤツだし、憂さ晴らしも兼ねて丁度いいかなーって」
マイキーの手がアタシの肩に回る。
マイキーはアタシを抱き寄せて、また鎖骨辺りに顔を埋めた。
ぐりぐりと頭を擦り付けて、「クソ…」と呟く。