第2章 参謀の仕事
「ねぇ、くすぐったいんだけど」
「うるせぇ」
マイキーの声が低い……割と怒ってるっぽい。
「ごめんて、先に伝えなかったのはアタシが悪かったから……そろそろ離して。もう帰りたい」
「場地の匂い消すまで離さねぇ」
匂いなんてそもそも付いてないと思うんだけど……
「……ムーチョは良くて、圭介はダメなの?」
「オレ以外の男は全員ダメに決まってんだろ!……ケンチンかムーチョならって、超妥協して許してやったのに」
超妥協って何、と心の中でツッコむ。
しょーがない、マイキーが落ち着くまで大人しくしてるか……
アタシがしばらくされるままにしてると、おもむろにマイキーが顔を上げた。
さっきまで頭擦り付けてたアタシの鎖骨に口付ける。
チュ チュ
「!ちょっ」
反射的に身を引くアタシを逃がさないと言わんばかりに抑えつけて、鎖骨から首へと唇を滑らせた。
「また痕付けたらブン殴るからね⁉︎」
「んー」
首にも口付けて、肌を柔く噛む。
「っ…」
アタシが漏れそうになった息をグッと堪えたところで、やっとマイキーは顔を離した。
「今日も和月ん家泊まる」
「絶対ダメ」
アタシが断ったらマイキーは不満げに頬を膨らませた。
「エマも先生も心配するでしょ、今日は大人しく帰って」
「じゃあ和月がオレん家泊まりに来て」
「嫌だ」
上目遣いで見てきたって絆されるアタシじゃないんだよ!
腕の力が弱まったタイミングを狙って、アタシはトンとマイキーの肩を押し、数歩分の距離を取る。
マイキーが「あ!」と声を上げた時には、アタシは手を振って歩き出していた。
「じゃあ、また明日」
「和月!」
「おやすみ〜」
またマイキーがゴネる前に、アタシはさっさと家路についた。
いつのまにか、愛美愛主にイラついて荒んでた気持ちも落ち着いてる。
口ではああ言ったけど、結局アタシもマイキーと居ると落ち着くんだよね。
絶対本人には言えないな……言ったら調子に乗って、離してくれなくなりそうだし。
それを想像すると夏なのに寒気がして、アタシは一人で苦笑った。