第2章 参謀の仕事
──「東卍(ウチ)のメンバーは、みんな家族もいるし大事な人もいる。一般人に被害出しちゃダメだ。周りの奴泣かしちゃダメだ」
「『下げる頭持ってなくてもいい。人を想う〝心〟は持て』……って」
「そっか……」
ドラケンらしい、優しい言葉だと思った。
「ケンは凄いなぁ……アタシなら、マイキーと一緒になって言い返しちゃってたと思う」
「うん……オレ、ケンチンが隣にいてくれて良かった」
そう話す、マイキーの表情は笑顔で、それは昨日の疲れた様子と比べて、大分晴れやかに見えた。
マイキーは「でも」と言葉を続ける……その表情が、少し暗くなった。
「あのコと、和月が同じ目に遭うんじゃないかって、そう考えたら怖くなった」
「えー、アタシの事信用してくれてないの?」
アタシがおちゃらけて言うと、マイキーはムッと眉根を寄せる。
うーん、ふざけていい場面じゃなかったか。
「言っただろ。オマエはオレのモンだ」
マイキーはアタシの頬に触れて、反対の手をアタシの後頭部に回し、グッと自分に引き寄せた。
「……ごめん」
間近にマイキーの黒い瞳と視線が交わって、アタシは目を逸らせなくなる。
「いつも、アタシのわがままで心配かけて、ごめん。……それでも、自由にさせてくれて、ありがとう」
頬のマイキーの手に自分の手を重ねて、アタシはマイキーに微笑んだ。
すると、マイキーの顔が近付いてきて……二人の唇が重なった。
重なり合った口を少し開かされて、差し込まれた舌がアタシのと触れ合う。
「んっ」
チュッと音を立てながらアタシの口を吸うと、マイキーは唇を離し、アタシの体を強く抱きしめた。
「ホントは……いつもこうやってくっ付いて、抱き締めて、キスして……オレの手でオマエの事守ってたい」
「……うん」
「でもオマエは、東卍の参謀だから…オレの為だけじゃなくて、仲間みんなの為に、いつも自由に走り回って……オレの知らないところで傷付いて帰ってくる」
このやり取りも何度目だろ……アタシが心配かけてばっかいるからいけないんだけども。
参謀なんて辞めて、常にマイキーの傍で大人しくしてれば、マイキーはずっと安心していられるのに……
頭ではそう分かっていても、応えられない……その事に、申し訳なさが募った。