第2章 参謀の仕事
抵抗するアタシを軽々と抑え込んで、マイキーはアタシの鎖骨辺りに顔を埋める。
スーッと息を吸って、マイキーは「あー落ち着く」と呟いた。
「嗅ぐなバカッ!帰ってからシャワー浴びてないから、今絶対汗臭いんだって」
「臭くねぇよ。いつもの和月の匂い。嗅ぐと落ち着く」
「嗅ぐなっつってンだけど⁉︎」
アタシがマイキーの両肩を押すと、ようやく二人の体が離れた。
「あっ、そーだキスマ!勝手に付けたの怒ってるんだからね⁉︎」
「オレのってシルシ付けとかねーと、愛美愛主の奴らに手ぇ出されたらたまんねーし」
「これ見て寧ろアイツら興奮してたよ」
「は?」
アタシがそのまま話すと、マイキーは両手でアタシの頬を包んできた。
「和月……愛美愛主に何もされてねぇよな?」
マイキーの黒い瞳がジッとアタシを見つめる。
「う、うん。誰にも触られてないから安心して」
キモい事は色々言われたけど、怒らせそうだから言わないでおく。
マイキーがアタシの手を引いてベンチに戻る。
アタシは手を引かれるまま、マイキーの隣に腰掛けた。
「オレ……今日ケンチンと、パーの親友(ダチ)の彼女が入院してる病院に行ったんだ」
「!」
マイキーは、今日アタシがいない間にあった出来事を話した。
いつものファミレスで、いつものお子様セットを食べて……
お腹いっぱいになってマイキーが寝落ちしてる間に、ドラケンはマイキーを背負ってその病院に向かったらしい。
パーちんの親友の彼女は、愛美愛主に嬲られ路上に放置されてたところを発見されて、病院に運び込まれて5日間、いまだ意識が戻らない。
彼女が眠る病室の前で、マイキーとドラケンは彼女の両親と遭遇してしまった。
彼女の父親は、二人を見るなり怒鳴りつけ、まるで二人が仇であるかのように罵詈雑言を浴びせたらしい。
マイキーは「オレらは悪くない」と言い返したかったけど、ドラケンに止められ、更に頭まで下げさせられた。
実際二人は関係ないのに、ドラケンはどれだけ暴言を吐き付けられても、彼女の両親が去るまで頭を下げるのをやめなかったらしい。
「ケンチンが言ったんだ。『“不良(オレら)の世界”は、不良(オレら)の中だけで片付ける』」