第2章 参謀の仕事
「じゃあな」
「今日は付き合ってくれてありがとね。……それと、ごめん」
「テメェが謝る事じゃねえよ」
そう言って、場地はゴキで自分の帰路についた。
場地の背中が見えなくなるまで見送って、アタシは家に入る。
バフッ
イライラムカムカする気持ちのまま、リビングのソファに背中から倒れ込んだ。
「あ゙〜〜!腹立つ…‼︎」
愛美愛主は、想像通りの酷いチームだった。
ヤツらが女(アタシ)を見るや冷やかしてきたのは、狙い通りだったけど……
並べ立てられた聞くに耐えない下品な言葉の数々に、場地がキレる寸前までいったのを宥めるのは大変だった。
顔ぐらいは知ってたけど、初めて面と向かった長内は、体格と同じくらい態度もデカい男。
似合ってないリーゼント、目に痛い赤の特攻服、吐き出される紫煙、全部が鼻につく。
女のアタシが出向いて来たってのも理由の一つだろうけど、明らかに東卍を下に見た態度に、アタシも怒りが募った。
何より許せなかったのは、パーちんの親友がパーちんに助けを求めたのを「情け無い」と馬鹿にしたことと、マイキーを“中坊”と揶揄して笑ったこと。
参謀として極力冷静に振る舞ってたアタシにも我慢の限界が来て、最後は完璧喧嘩売る形になって帰って来た。
「アタシの馬鹿……」
長内に命じられパーちんの親友を嬲った、実行犯共を見つけ出したかった。
でももう、全員がそうなんじゃないかと思うくらいに下劣な奴らばかりで、何人かに当たりを付けることすら出来なかった。
「ハァーッ……ごめん、パーちん」
目に手を当てながら一人呟いて、アタシは自分の情けなさに辟易する。
圭介にも嫌な思いさせた……まぁ、最後は押さえ切れずに一人ブッ飛ばしてたけど、あんなんで怒りが治まったとも思えない。
「ハァー」
アタシはまた溜息をついて、ソファから体を起こした。
実行犯はまた探すとして、今考えるべきは8月3日の決戦!
頭数は向こうの方が多い上、そのほとんどが年上で身体的強さも向こうが上。
マイキーやドラケン、場地や他の隊長など東卍の幹部はみんな強いけど、それだけで勝てるほど甘い敵じゃない……どんなに下衆な奴らでも、向こうは暴走族として八代も続いてるチームなんだ。