第1章 東卍の参謀
キヨマサの態度と周囲の雰囲気からして、この主催はアイツなんだろうけど……
ただの特攻が、東京卍會の名前を勝手に使って、こんな人数集めて喧嘩賭博を開催してるこの状況、どうするべきか。
さっさと止めても良いけど、先にパーちんに問いただすべき?念のためドラケンに報告するか……
「うあああああああ!!!」
ゴッ
「……あ。」
考えてる間に喧嘩が始まって、呆気なく終わった。
何度も叫んで自分を奮い立たせてた子の一撃で、相手の髪型バッチリ決めた金髪の子は気絶……
数秒後に大ブーイングが巻き荒れ、少ししたら主催側の「解散」の号令で集まってた不良は散って行った。
「……まぁ、また明日でいっか」
やっぱり先に報告してしまおうと、アタシは公園を戻り今度こそ家路に着く。
やられちゃった子には悪かったな……と、少しだけ罪悪感が湧いた。
◇◆◇◆
翌日、放課後になると共に、アタシはドラケンの携帯に電話をかけた。
「もしもし、ケン?」
《おー、ユウか》
スニーカーを引っ掛けながら校舎を出て、校門に向かう。
「昨日話した喧嘩賭博さー、やっぱパーちんは知らないって」
《だろうな》
パーちんがそんな馬鹿なことするわけないって、アタシもドラケンもわかってる。
十中八九キヨマサが勝手にやったことだろう。
「アタシこれから止めに行ってくるから、マイキーにそう伝えといてくれる?──」
《和月!》
電話口から聞こえたドラケンではない声、男にしては高い声に、一瞬アタシは足を止めた。
《オレも行く!》
「マイキー」
《和月、何で電話オレじゃなくケンチンにすんだよ》
不満を訴えてくるマイキーに呆れながら、アタシは再び歩き出す。
「アンタが出張るほどの話じゃないからよ。アタシ一人で行くから、アンタはケンと──」
《オレも行く》
アタシの声を遮って、マイキーは「てか、もうケンチンと向かってる」と話す。
「何で」
《暇だから♡》
「暇って……」
文句を言おうと口を開いて、言ったところで無駄に終わると気付いて、やめる。
これがいつものパターン。
《オレらが行くまで待ってろよ》
「はいはい、総長様の仰せのままに」