第2章 参謀の仕事
「ただし、喧嘩はナシだからね」
「そりゃ向こう次第だな」
アタシにそう返して、また場地はニヤッと笑った。
「場地が一緒なら安心だね」
ほっと安心するアングリーの隣で、スマイリーは「チッ」と舌を打つ。
「オレらがついてきゃ、一足先に暴れられると思ったのによぉ」
「スマイリー、アンタ集会でアタシが話した事聞いてた?」
スマイリーにツッコミつつ、アタシは視線を走らせ、伍番隊隊長であるムーチョの姿を探す。
けど見つからない、もう既に副隊長と帰ってしまったらしい。
アタシは携帯を開いて、ムーチョに『明日は場地と行く事になった』事と『ムーチョは自分の仕事に集中して欲しい』という旨のメールを送った。
パチンと携帯を閉じて、アタシは場地を見上げる。
「じゃあ、明日11時。ここで待ち合わせてから新宿ね」
「おう、腕が鳴るぜ」
「喧嘩はナシっつってんのに」
肩を回しながら離れてく場地の背中を見送りながら、アタシの口からは溜息が漏れた。
「スマイリーも、大人しくしててね」
「へーへー、わかったわかった」
「アングリーは、スマイリーのストッパー役頼んだよ」
「うん、任せて。ユウも、くれぐれも気を付けてね」
スマイリーとアングリーとも別れて、アタシはようやく帰る為に歩き出す。
歩きながらぐーっと腕を伸ばすと、今度は口から欠伸が漏れた。
「……ん?あれ?」
神社から出て少し歩いた先に、見覚えのある人影を見つけ、アタシは目を丸くする。
「マイキー⁉︎」
それは、愛機を背に、腕を組んでこちらを見るマイキーの姿だった。
「え⁉︎ずっと待ってたの?先帰ってていいって言ったのに」
アタシが駆け寄っても、マイキーは何も答えず、ジッとアタシを見るだけ。
うわー、怒ってるー。
マイキーが組んでた腕を解いて、スッと右手をこちらに伸ばした。
アタシは「ごめんね」と言いながら、その手をギュッと握る。
「待っててくれてありがと」
「………」
グイッ
「!」
マイキーが、繋いだ手を力一杯引いた。
反対の手では、力負けして前のめりになるアタシの肩を掴んで、自身に引き寄せる。
「んんっ⁉︎」
そのまま、マイキーとアタシの唇が重なった。