第2章 参謀の仕事
「明日、愛美愛主んトコ行くなら気をつけろよ」
アタシは、「三ツ谷も心配性じゃん」って返したかったけど、三ツ谷の表情が真剣なものに見えたからやめといた。
「大丈夫。いつも通り上手くやるし、ヤバくなったら逃げるから」
アタシが女だから、三ツ谷は余計に心配してくれてる……それでも「行くな」と口にしないのは、アタシを信頼してくれてるから。
その信頼が心地良くて、アタシは三ツ谷に向かってニッと笑う。
「アタシの逃げ足の速さは知ってるでしょ?」
「よーく知ってる」
最後に三ツ谷は「何かあったら連絡しろよ」と優しい言葉を残して、愛機に乗って帰って行った。
さてアタシも帰るかと、アタシは踵を返す。
「おいおいユウ、オマエ一人で愛美愛主に突撃する気か?」
振り返ってすぐアタシにそう話しかけてきたのは、肆番隊隊長・河田ナホヤことスマイリー。
「突撃じゃなくて宣戦布告ね。武蔵祭りで決戦しーましょ、って喧嘩売りに行くんだよ」
「そんなん突撃に変わりねぇだろボケ」
「今日もニコニコ笑顔のくせに口が悪いなぁ」
「一人でなんて危ないよ」
スマイリーの隣でアタシを心配してくれるのは、スマイリーの双子の弟で肆番隊副隊長の、河田ソウヤことアングリー。
いつも怒ってるような顔をしてるけど、その性格は不良とは思えないくらいに優しい男。
「オレらで良ければついて行くよ?」
「ありがとね。でも心配しなくても、ちゃんと護衛に──」
その時、ガシッと誰かがアタシの頭のお団子を掴んだ。
「オレがついてってやるよ。明日なら丁度ヒマだしな」
「場地!立ち聴きしてやがったか」
壱番隊隊長、場地 圭介。
頭動かせないから目線だけ上に向けると、そこには不敵に笑う場地の顔がある。
「圭介〜、今すぐその手ぇ離してくれる?お団子崩れたら困る」
「おっと悪ぃ」
パッと髪から手を離すと、場地はそのままアタシの肩を抱いた。
「で?明日何時だ?」
「え、マジでついてくんの?」
「あ?さっきそう言ったろーが」
「……ホントはムーチョについて来てもらう予定だったんだけど」
場地は、ジッとアタシの目を見つめながら答えを待つ。
「……まぁ、圭介でもいっか」