第2章 参謀の仕事
少し早足で階段を降り、下の駐車場に向かう。
「パー!」
パーちんは、愛機のCBX400F(フォア)に跨って、今にも出発しようというところだった。
パーちんの近くには同じく愛機に跨ったペーやんと三ツ谷もいる。
「んだよ、ユウ」
面倒くさそうに言いながらも、ちゃんとこっちを振り向いてくれるパーちんを見て、少し安心した。
「んー、ちょっと心配だったから声かけたけど、大丈夫そうだね」
「心配しなくても、言われた通り愛美愛主に突っ込んだりしねぇよ。……オレは8月3日に、長内をぶっ殺す」
「じゃあ長内をタイマンに引っ張り出さないとね。アタシの仕事だ」
アタシが笑ってそう言うと、パーちんは表情を暗くする。
「ユウ……オレぁ、オマエにもマイキーにも……みんなに迷惑かけて」
「迷惑なワケないじゃん!」
アタシは、ハンドルを握るパーちんの手に自分の手を重ね、俯くパーちんの顔を覗き込んだ。
「みんな、親友の為に怒れる、仲間想いなパーちんが好きなんだよ。だから、アンタは何も気にしなくて良いの」
パーちんは、また目に涙を溜める。
「相談があればいつでも力になるから、あまり一人で思い詰めないで。……アタシに言いにくい事なら、ペーやんに話せばいいしね」
アタシが「ね?」とペーやんを見ると、ペーやんは「おう‼︎」と元気良く答えた。
「明日アタシ、愛美愛主んトコに宣戦布告に行ってくるから」
「!」
「だから明後日、パー達の学校近くの廃倉庫に来て。マイキーとドラケンと、5人で作戦会議しよ」
「ああ、わかった」
アタシが手を離すと、パーちんとペーやんは愛機を走らせ帰って行った。
アタシは、今度は三ツ谷の方に足を向ける。
「三ツ谷」
「ん?」
「学校で、それとなくパーの事見てて欲しいんだけど」
決戦の時には夏休みに入るとはいえ、三ツ谷とパーちん同じ学校だから、アタシはそう彼にお願いした。
三ツ谷は、そんなアタシを見て笑う。
「ハハハ、相変わらず心配性だな、参謀どの」
「うるさいな、別にいいでしょ」
「ああ、それがオマエの良いところだよ。……わかった、気にかけとく」
「ん、ありがと」