第2章 参謀の仕事
少し不満そうにしてた喧嘩っ早い組の奴らも、“東卍の参謀が詫びを入れる”というあってはならない事態を想像して、顔をしかめた。
「愛美愛主と遭遇して喧嘩しない自信がない奴は、決戦まで新宿には行かないように」
後でパーちんとペーやんには重ねて注意しとこ。
「アタシからは以上!みんなのやる気は勝ってるから、8月3日に全てぶつけてやれ‼︎舞台はアタシが用意する‼︎」
最後にアタシがみんなに向けてニッと笑うと、みんなは再び声を上げて答えた。
それを頼もしく思いながら、アタシはマイキーの元へと向かう。
後ろでは、ドラケンが解散の号令をかけていた。
◇◆◇◆
マイキーは、神社左側の林の中、木を背もたれにして立っていた。
「マイキー」
アタシが声をかけると、マイキーはアタシの方を見て「ん。」とこちらに両手を伸ばしてくる。
え、今ハグすんの?とツッコミたい気持ちは抑えて、アタシはマイキーに歩み寄った。
肩にマイキーの手が触れると、すぐに両腕が巻き付くように、アタシの体はマイキーに抱きしめられた。
「んーー」
腕に力を込めてアタシを締め付けながら、マイキーは間延びした声を漏らす。
いつもは外でこんな疲れた様子見せないのに、珍しい……
マイキーはマイキーで、ずっとパーちんやパーちんの親友の事を考えてたんだね。
「お疲れ様」
アタシもマイキーに腕を回して、背中をポンポンと軽く叩いた。
でも、あんま長くはしてられない。
「ねぇ、マイ──」
アタシが話しかけるとほぼ同時、おもむろにマイキーが顔を上げて、アタシに近づけて来た。
パシッ
「むっ⁉︎」
迫り来る唇を、アタシは手で押さえて阻止。
マイキーは一瞬驚いた顔をして、すぐに不機嫌そうに眉根を寄せる。
「なんだよ。オレとキスすんの嫌?」
「悪いけど、アタシまだあっち戻んないと行けないから」
マイキーの肩を押して体を離し、アタシは踵を返して歩き出した。
「時間かかるかもだから先帰ってていいよ、って伝えに来たの」
「はぁ⁉︎オイ、和月!」
「キスはまた今度ね。お疲れ〜」
マイキーへヒラヒラと手を振りながら、アタシはまたみんなの方へと戻った。
パーちん達、まだ帰ってないと良いけど……