第2章 参謀の仕事
マイキーは冷徹に、煽るように、パーちんに問う。
「ヤんの?ヤんねえの?」
「──やりてえよ!!!ぶっ殺してやりてえよ!!!」
顔を上げてパーちんは、今度は自分の本音を強く叫んだ。
それを聞いて、マイキーはパーちんへ「だよな」と言って笑う。
石段から立ち上がると、みんなへ目を向けた。
「東卍(こんなか)に、パーの親友(ダチ)やられてんのに、迷惑って思ってる奴いる⁉︎」
返る声は無い。
「パーの親友(ダチ)やられてんのに、〝愛美愛主〟に日和ってる奴いる?」
返す代わりに、みんなは口元に弧を描いていた。
「いねえよなぁ!!?」
隊長も、副隊長も、隊員も全員、とっくに答えは決まってる。
「〝愛美愛主〟潰すゾ!!!」
「「「ワァアアアアアア」」」
マイキーの言葉に、今度はみんな声を上げて答えた。
マイキーは踵を返し、歓声を背に受けながら神社の方へと歩いてく。
「8月3日、武蔵祭りが決戦だ!」
(8月3日…ドラケンが死ぬ日⁉︎)
タケミっちは、この空気に飲まれたみたいに、唖然としていた。
「ユウ!後は任せるぞ」
「了解、マイキー」
マイキーを見送って、今度はアタシがみんなの前に立つ。
「静かに‼︎」
アタシが大声で呼びかけると、数秒かけて歓声が止んだ。
最初に隊長たちが静かにしてくれるから、隊員達も大人しく口を閉じてくれるんだよね。
「今んとこ、東卍から愛美愛主に決戦を申し込む予定。向こうにとっちゃ新参の東卍でも、挑んだのが〝決戦〟なら、奴らは絶対に無視できないから」
東卍の方針を決めて、仲間の士気を上げるのは、総長であるマイキーの役目。
「詳しい話はまた後日詰めるけど、今の時点で参謀(アタシ)から全員に話しておきたい事がある」
士気は削がないように、なおかつ暴走させないようにするのが、アタシの役目。
「8月3日の決戦を迎えるまで、愛美愛主との揉め事は起こさないこと」
ウチは喧嘩っ早いヤツが多いから、特に注意しなきゃいけない。
「今回は、東卍(ウチ)が決戦を“申し込む”立場。それを待たずしての喧嘩は、絶対にしちゃいけない。こっちからフッかけるなんて、もってのほか!もしそんな事した奴が居たら、アタシは愛美愛主に詫び入れに行くからね」