第10章 10月31日
「ヒャハ」と耳障りな笑い声を上げて、半間は興奮をあらわにする。
「狙われンのも計算のうちってか⁉︎益々イイなぁ!和月ちゃん♡」
「気安く名前呼ぶなっての」
アタシは構えを取りながら、チラッとドラケンの方を見る。
まだまだ遠くで、芭流覇羅の隊員達と戦っていた。
ドラケンの助けをアテにしちゃダメだ……
「今日は逃げンなよ?」
「それはこっちのセリフ。今日こそ、キッチリ負けてってもらうから」
アタシが、半間を倒さないと──!
◇◆◇◆
バシッ ガッ ゴ
長い手足から繰り出される半間の攻撃を、アタシは受け止めてはカウンターを狙っていった。
8・3抗争の時みたいな、避けに徹する戦法は使えない……
そんな悠長な事してたら、先にアタシの体力が尽きるし、下手に離れ過ぎれば──
「オラァ‼︎」
「!」
──芭流覇羅の隊員からの攻撃が来る。
振り下ろされたナイフを受け止める暇はなくて、アタシはすんでのところで避けた。
刃がチッと頬と肩を擦り、わずかな痛みが走る。
ドッ
「がッッ‼︎」
アタシは、強く拳を握り込んで、思いっきり隊員の腹を殴った。
「オイオイ、テメーら顔はやめとけよ?ボロボロにしちまったら、“お楽しみ”の時萎えンだろーが」
「!チッ」
背後に半間が来てたから、アタシは身を翻して応戦する。
ガシッ
アタシが放った拳は、半間の手に軽々と受け止められた。
「今日はやけにヤル気じゃねえか、和月ちゃん?」
ブチッ
「ああもううるさい!!!」
ブチギレたアタシは、拳はそのままに半間の横腹目掛けて足を振り上げる。
「アタシをその名前で呼ぶな!!!」
半間は余裕そうに、アタシの蹴りを受け止め──
グイッ
「⁉︎」
──受け止めようとしたけど、アタシはそうさせなかった。
受け止められてた拳を開いて半間の手を掴み返し、強く手前に引っ張った。
「あ?」
女の腕力じゃ敵わないから、自分ごと倒れるつもりで体重かけて引いて、ギリギリだった。
同時に軸足を倒して後ろに引いたアタシは……
ゴ
その体勢のまま、半間の“こめかみ”に蹴りをぶち込んだ。