第10章 10月31日

ドガッ


よし、やっとまともなの一発！


「半間さん‼︎」


「嘘だろ…⁉︎」


「あの女、半間さんに蹴りを⁉︎」


半間の体は、囲んでた隊員達に受け止められた。


アタシもかっこ悪く尻餅ついたけど、自分で取った行動だけに、半間より先に立ち上がる事ができた。


立ち上がってすぐ、アタシは周囲を警戒する……けど、芭流覇羅の隊員達が向かってくる様子はない。


芭流覇羅の隊員達は、ここに半間が現れた途端、アタシに突撃して来なくなった。


アタシと半間を囲うようにして立って、アタシが近くに来た時だけ攻撃する……それまで、手柄立てる為に躍起になってたヤツらとは思えない。


「薄気味悪いヤツら……」


アタシは小声で詰る。


これが、芭流覇羅の持つ不気味さそのものだった。


東卍を潰して名を上げる為に、集められただけのチンピラかと思えば、上の命令に大人しく従う兵隊のようで……半間か一虎か、もしくは他の幹部の統率力がそうさせるのか……


「ダリィ…」


半間が、ゆっくりと立ち上がる。


アタシに蹴られたこめかみに触れて、喉を鳴らして笑った。


「意外と泥臭くヤんなぁ……女の蹴りじゃねぇぞ？」


「そりゃどーも。今度はそのモヒカンごと潰してあげるよ」


半間が再び向かってくる。


さっきまで笑ってた顔は今は無表情で、さすがにイラだった様子。


半間の余裕を崩せたのは良いけど、アタシ自身も焦っていた。


この場にずっと囚われていて、他の戦況を把握できてない……


乱戦の波、隊長達の位置、そして何より……マイキーと一虎は──


「うぉらあああ！」


「！」


またどこからか、タケミっちの大きな声が聞こえてきた。


「かかってこいやテメーら!!!」


アタシは、半間と芭流覇羅の隊員達の奥に、タケミっちの姿を見つける。


「ハァ、ハァ」


既にフラフラのヨロヨロで、立って歩くのもやっとの状態……無理矢理に腕を振り回して乱戦の中を走っていた。


「ハァ…ぜってー倒れねーじょ…ハァ…この抗争はオレが終わりゃすんだよ…」


「タケミっち……」


「オレがぜーいん──ぶっ飛ばす!!!」