第10章 10月31日
アタシが気付いた事に向こうも気付いて、蘭と竜胆は二人してアタシに向けて中指立ててきやがった。
「クッソ腹立つ…アタシも中指立てとこ。くたばれ」
「やめとけ」
バシッと三ツ谷に手を叩き落とされて、アタシは「チッ」と舌打ちをする。
灰谷兄弟は、まだアタシをじっと見てた。
その表情は嫌らしくニヤついてて、目が合うだけでゾッとする……二人揃って整った顔してるから余計に。
「相当恨み買ってるよな……前から聞こうと思ってたけど、オマエいったい灰谷兄弟に何したんだよ」
「別に……そんな大した事してないよ。ナンパされたから逃げたってだけ」
思い出したくもない思い出が、頭の中に浮かんでくる。
「ホントにそれだけか?」
訝しげに三ツ谷に見つめられる、気性からかアタシは三ツ谷のこの目に弱かった。
まぁ別に知られてもいいかと、観念して口を開く。
「……路地裏まで逃げても追ってくるから、近づくなって意思表示でその辺にあったゴミ箱蹴っ飛ばした」
「それで?」
「勢い余って二人のオシャレな髪と高そーな服汚しちゃった。生ゴミで」
その後は地獄の鬼ごっこだった。
「……オマエよく今まで無事だったな」
「無事なもんか!あの二人、アタシ見つける度しつこく追っかけ回してくるんだからね⁉︎」
蘭は性格ネチネチしててキモいし、竜胆は手足絡み付けてくんのが嫌!
「じゃあ今日も気を付けとけよ。さすがに決戦中は手ぇ出してこねーと思うが……終わった後はわかんねぇぞ」
「うわ、コワー。三ツ谷守って」
「無茶言うな」
なんて会話をしながら、アタシと三ツ谷は一旦廃車場から出た。
「遅え」
「ごめんごめん」
マイキーの元に戻って、定刻を待つ。
決戦開始まで、あと少し──……
◇◆◇◆
定刻になり、廃車場の重い門が開かれる。
「準備はいいかー!!?」
阪泉のデカい声が、廃車場に響き渡った。
「主役共のぉ!!!登場だぁ!!!」
マイキーを先頭に、廃車場の門を潜り東京卍會は中へと足を踏み入れた。
「東京卍會!!!」
反対側の門からは、芭流覇羅のヤツらが同じく歩を進める。
「芭流覇羅!!!」