第10章 10月31日
10月31日───決戦当日
決戦の場は、芭流覇羅が指定した廃車場。
今はまだ、東卍も芭流覇羅も中には入ってないけど……廃車場には既に、無数の不良が集まっていた。
いずれも、東卍でも芭流覇羅でもない……今日の決戦を見ようとやって来たギャラリー達だった。
廃車場の空気が、ザワとわずかに揺れる。
「おい、アレ…」
「東卍の女参謀だ」
「一緒にいんのは…弍番隊隊長の三ツ谷か」
ギャラリーの顔触れを確認する為に、アタシは定刻前に廃車場の中を歩いて進んでいた。
本当は一人で回るつもりだったけど、「女一人だと絡まれンだろ」と三ツ谷が付いて来てくれた。
「今日、仕切りは?」
「場所は芭流覇羅(むこう)の指定だから、仕切りは東卍(ウチ)が……ICBMの阪泉に頼んだ」
アタシは辺りを見回して、目当ての男を見つけて、三ツ谷に示す。
池袋クリミナルブラックメンバーズ……通称〝ICBM〟リーダー・阪本泉(さかもと いずみ)こと〝阪泉(ハンセン)〟
東卍ともバチバチの仲だけど、スジさえ通せば話の分かる男だから、マイキーと決めた上でアタシから今日の決戦の“仕切り”を任せさせてもらった。
「にしても……思ったよりもギャラリー集まってんな」
「うん……見てあれ、上野〝夜ノ塵(ナイトダスト)〟の〝ガリ男(マン)〟が来てるよ」
「うお、マジか」
あんな大物まで……
向こうからすりゃ新興同士の決戦なのに、この人数……もしかしたら芭流覇羅側が呼びかけたのかもしれないけど、なんだかなぁ。
鬱陶しいと思いつつ、アタシは顔触れを見回しメンツをしっかりと覚えて行った。
決戦に余計な手出ししてきたヤツには、絶対報復してやる。
「──ユウ」
「ん?」
三ツ谷が、アタシの耳元に口を寄せて小声で話しかける。
「さっきからずっと、灰谷兄弟がオマエの事見てンぞ」
「!ゲッ」
三ツ谷の示す先に目を向けると、積み上げられた廃車に腰掛けてる〝灰谷兄弟〟の姿があった。
兄の蘭(らん)と、弟の竜胆(リンドウ)……別名・六本木のカリスマ兄弟。
お互いしか信用してないのか、暴走族のようなチームは組んでないらしいけど……一声かければ下に100人は集まるようなカリスマ性を持つ、厄介なヤツら。