第10章 10月31日
ギャラリーの目が東卍と芭流覇羅に集まる……その多くは、マイキーに注がれていた。
「マイキーだ」
「無敵のマイキー」
中央目掛けてある程度まで進むと、両チームは一旦立ち止まり、その間に仕切りの阪泉とICBMの数人が立つ。
「阪泉君!」
マイキーが、阪泉に声をかけた。
「まずは、今日の“仕切り”引き受けてくれて、ありがとうございます」
「ハン…まあ、殊勝な参謀に頭下げられちまったからなぁー」
阪泉の目がチラッとアタシに向く。
アタシは、ニコッと今できる限りの笑顔を返しておいた。
アタシだって阪泉には感謝してるから。
「くだらねぇ喧嘩ならオレが潰すぞぉー」
阪泉がマイキーにそう返した後、ICBMの幹部が声を張った。
「両チームの代表者、前に‼︎」
東京卍會からはドラケン、芭流覇羅からは一虎……二人はそれぞれ前に出て、阪泉の前で向かい合う。
「腕に自信のある奴5対5のタイマン、それとも全員で乱戦…どっちにするぅ?」
アタシは、ドラケンの背中とその奥の一虎の姿を見つめた。
「芭流覇羅の売ってきた喧嘩だ。そっちが決めろや、一虎」
「あん?」
「オレらの条件は一つ!場地圭介の奪還!」
ドラケンの宣言に、一虎がピクッと反応する。
「東卍が勝利した暁には、場地を返してもらう。それだけだ‼︎」
「は?場地は、自分でウチに来たんだぞ?返すも何もねーだろーが‼︎」
「場地を返してもらう‼︎それだけだ‼︎」
一虎の言葉も一蹴する、頑としたドラケンの宣言に、一虎はこめかみに青筋を浮かべた。
「テメー…上等じゃねーかよ」
一虎が拳を握るのを見て、阪泉が二人の間に入る。
「オイ、ここで争う気かー?」
その時、
ゴッ
「‼︎」
いきなり、一虎が阪泉の頬を殴り付けた。
ドッ
「はがっ」
続け様に阪泉の腹に拳を叩き込む。
阪泉は、腹を押さえた体勢でドサッと地面に倒れてしまった。
「アイツ……‼︎」
バッ
「!」
アタシが激昂するのを感じたのか、マイキーが腕を伸ばしてアタシに「動くな」と制した。
「マイキー……」
「………」
アタシは一つ深呼吸をして、気を落ち着ける。