第9章 参謀の策略
アタシの言葉に呆気に取られたような顔をして、その後は線が緩んだように、ドラケンはフッと軽く笑った。
その表情を見て、アタシも気が緩んだのか口から「ふあぁ」とあくびが出てきた。
「…ねむっ、マイキーまだかな」
「寝ててもいーぞ」
おちゃらけたように言ってくるドラケンに、アタシは目を擦りながら「やめとく」と返す。
「マイキーに怒られそうだから」
「何か飲むか」
「ココア!」
「了解」
ベンチから立ち上がって、ドラケンは近くの自販機に向かってく。
戻って来たドラケンからココアを受けとって、アタシは素手で触るには熱い缶を袖越しにぎゅっと握りしめた。
「ありがと、お金は今度返す」
「大人しく奢られてろ」
「じゃあ、今度はアタシが奢る」
「…おー、頼むワ」
ドラケンが、自分の分のココアに口をつける。
アタシもココアを飲んで、ホッと息を吐いた。
芭流覇羅との決戦、ドラケンには他にも伝えたい事があるけど、今日はもういっか。
それは集会の時に伝えようと思って、アタシはそのまま自分の眠気と闘うことに専念した。
◇◆◇◆
10月30日───決戦前夜
武蔵神社、拝殿前の広場、アタシはいつものように総長(マイキー)の斜め後ろに立つ。
「これより、VS.芭流覇羅決戦の決起集会を始める‼︎」
アタシの隣に立つドラケンが、全体を見渡して号令をかけた。
隊員達がそれぞれ、総長を見上げる。
けど今日は、先に参謀(アタシ)が話す事になってた。
アタシはスッと息を吸って、声を張った。
「芭流覇羅との決戦は、恐らく全体での乱戦になる。敵は東卍の倍はいる戦力で、その大半が上の世代。卑怯な手も使ってくる危険なヤツら」
改めて油断はするなと伝えて、アタシはもう何度も言ってきた少数側の乱戦の決まりを口にする。
「絶対に単独で突っ走らないこと、敵に囲まれたら一貫の終わりだから!なるべく背中は味方側に向けること、意識し辛いかもだけど生き残るには大事なことだよ。前衛は隊長・副隊長に張ってもらうけど、各隊員誰も油断しないこと」
一息吐いてから、アタシは厳しく隊員達を見据えた。