第9章 参謀の策略
バブーーーー…
遠ざかっても、耳に心地良い排気音を聴きながら、アタシは近くのベンチに腰掛ける。
少し間を置いて、ドラケンも隣に腰掛けた。
「ケン…アンタ何かあった?」
「!」
さっきの違和感について、アタシはドラケンに直接聞いた。
アタシの考え過ぎならそれはそれで良かったんだけど、ドラケンの驚いたような様子から勘違いじゃないと察する。
ドラケンは、一つ息を吐いてから、アタシに答えた。
「一虎と会って来た」
「は⁉︎」
まさかの内容に、アタシは驚きドラケンを見る。
ドラケンはベンチに深くもたれ掛かりながら、目を暗い夜空に向けた。
「アンタ……アタシには『大人しくしてろ』って言っときながら!ズルい!」
訴えるアタシに、ドラケンは「何がだよ」と面倒くさそうな顔をする。
「オマエだって、芭流覇羅のアジト行ったじゃねえか。マイキー怒ってたろ」
「アタシは、タケミっち助けに行っただけだし、悪くない」
「本当にそれだけか?」
「う……」
ドラケンの鋭い返しに、アタシはギクッと肩を跳ねらせる。
半間に触られた、人質にされそーになった、一虎と殴り合いしようとしたetc……アタシが敢えてマイキーに話してない事はいくつかある。
ドラケンに下手なこと言ったら、マイキーに即バレる……と思ったら黙らざるを得なくて、でも悔しくて「う〜〜!」と唸った。
バシッ
ドラケンの肩を叩いて八つ当たりする。
「オイコラやめろ」
「フン!」
半分はふざけてだけど、2、3発叩かせてもらった。
「ケンもマイキーも心配し過ぎなんだよ」
「オマエは、ほっとくと無茶すんだろ。特に今みてーな抗争の時はな」
「大体上手く行ってンだからいーでしょ」
「オマエなぁ」
またドラケンが呆れ顔してる気がするけど、無視無視。
顔を逸らして海の方を見つめつつ、アタシは話を一虎に戻した。
「……ケンはさ」
「あ?」
「抗争を止める為に、一虎に会いに?」
「ああ……断られちまったがな」
「……そっか、ケンの説得でもダメか〜」
一虎を説得して、止められるものなら止めたかった。
アタシが抱いてたその気持ちは、副総長も同じだったみたい。