第9章 参謀の策略
───夜
マイキーから呼び出され、アタシは家の外に出た。
マイキーは「走りに行こ」と、問答無用でアタシをCB250T(バブ)に乗せて走り出す。
「アタシもう寝るとこだったんだけどー」
「いーじゃん。ケンチンも来るし」
「じゃあケンと2人で行きゃいーでしょ……」
マイキーの背中に頬を押し付けて、アタシは「ふあぁ」とあくびを溢した。
夜の街を走り抜け、マイキーはバブを海沿いの歩道で停止させた。
ココアでも買おうかなと考えてる間に、別の排気音が合流する。
ドラケンのゼファーだ。
「ケン」
「おー、ユウも居たか」
ゼファーから降りて、ドラケンはマイキーの方に向かう。
「マイキー……」
「……?」
マイキーを見つめるドラケンを見て、アタシは少し違和感を覚える。
何かあったの?と、ここで聞くのは躊躇われた。
「ケンチン、和月」
マイキーは海を見つめてたけど、ふと視線をバブに落とした。
「もう、戻れねぇのかな…?」
「!」
マイキーが呟いた言葉に、アタシは思わずキツく手を握り締める。
マイキーが戻りたいと願うのは、アタシ達が東卍を結成したあの頃で、今はきっと心の中に場地を想ってる……
あの頃のアタシ達は、無敵で、不敵で、怖いものなんて何もなかった。
一虎が真一郎を殺すなんて、パーちんが捕まるなんて、場地が裏切るなんて、思ってもいなかった。
「兄貴なら、どうすんだろ…?」
マイキーは、バブのタンクに手を置いて、悲しげに呟く。
「さぁ?CB250T(ソイツ)と語ってこいよ」
反対にドラケンは穏やかな声で、マイキーの背中を押した。
「気が済むまでさ」
マイキーは後ろを振り向いて、アタシの目を見つめる。
アタシは軽く手をあげて、マイキーに「いってらっさい」と伝えた。
「和月も…」
「んー…やめとく。2ケツしてちゃ、アンタ思いっきり走れないでしょ」
無言になるマイキーに、アタシは安心させるように笑って見せる。
「アンタが戻って来るまで、待ってるから」
「!……うん」
マイキーはバブに乗り、排気音を響かせながら走り出して行った。