第9章 参謀の策略
咎めるように呼び止めても、アタシの意を汲んでくれたのか、マイキーは追いかけて来なかった。
もしかしたら、ドラケンが止めてくれたのかもしれないけど。
◇◆◇◆
墓石の前に、アタシはもう一度蹲んで手を合わせる。
その後、力を抜くように手を下げて、じっと墓石を見つめた。
あの日、アタシが──
「ごめん」
眠ったりなんてしなければ、もっと早く目を覚ましていれば
真一郎を一人にしなければ、一緒に店に向かっていれば
「ごめんなさい」
一歩でも足を動かしていれば、迷わず踏み出せていれば
一虎を止められたかもしれない、真一郎は死ななかったかもしれないのに──
「真一郎」
アタシは、間に合わなかった……何もできなかった。
誰かに責められたワケじゃない……それでも、ずっと悔やんで止まなかった。
悲しみが重たく絡みつくように、足が動かなくなる。
流れた涙が、ポタポタと地面に落ちる。
早鐘を打つ鼓動も、口をつく嗚咽も止まらない。
「万次郎…っ」
思わず呼んだ声は、聴いて自分で情けなくなる程弱々しかった。
そこへ、
ザッ ザッ
墓道の砂利を踏む足音が聞こえてくる。
「和月‼︎」
ガシッ
「⁉︎う、えっ」
アタシの腕を掴んで、グイッと上へと引っ張る。
アタシの体は力づくで立ち上がらされて、まだ力の入らない膝が崩れてしまう前に、キツく抱き締められた。
今しがた自分が助けを求めるように名前を呼んだ、マイキーに。
「マ、イキー…?」
「………」
ギュー!
アタシの呼びかけには無言で、マイキーはただただアタシを抱き締める。
表情が見えなくても、その腕の力強さだけで、アタシの悲しみを溶かしていった。
◇◆◇◆
マイキーに腕を引かれながら、アタシはバブのトコまで連れ戻される。
「……ケンは?」
「先帰った。何か用があんだって」
涙を拭ってくれるマイキーに、アタシは居た堪れなくて目を伏せる。
いつのまにか雨は止んでいた。