第9章 参謀の策略
一虎は、店のウィンドウに飾られたバブを見て、マイキーが乗る姿を見たいと思った。
場地は、自分がいた場でマイキーに原付きを失わせてしまった事に負い目を感じてた。
だから盗もうとした。
それが犯罪だと分かってても……一虎も、場地も、ただマイキーを喜ばせたかった一心で……──
「そう…今更しょうがねぇって、わかってる」
マイキーの黒い瞳が、真一郎が眠る墓石を見つめる。
「でも、心がついてこねぇ」
その声には、悲しみが滲んでいた。
アタシ達は墓石を後にして、霊園の出入口の方へ歩いてく。
近くに、マイキーとドラケンのバイクが停めてあった。
「場地と一虎が盗もうとしたCB250T(バブ)は、兄貴が乗ってたバブなんだ」
マイキーの話に、タケミっちは「え!!?」と驚いた声をあげる。
「オレの誕生日に、プレゼントしてくれるハズだった」
ギュッと、心臓が締め付けられるような悲しみに、アタシは目を伏せた。
あの日、アタシが──……
「兄貴の形見のバブ。オレの今の愛機だ」
そう言って振り向いたマイキーに、タケミっちはゴクと唾を飲み込む。
「あれから2年、場地の事は許した。でも──」
マイキーの目が、再びバブに留まる。
「知らなかったとしても」
「……」
アタシとドラケンは、そんなマイキーの背中を見つめる。
「今更どうにもなんなくても」
マイキーは、一層低い声で告げた。
「兄貴を殺した一虎だけは、一生許せねぇ」
ゾクッとした悪寒が背中を走る……マイキーの冷たい怒りが伝わってくるように。
「場地が一虎側に行くのもな!」
瞳孔を鋭くして、マイキーはタケミっちを睨む。
「タケミっち…オレは、場地を連れてこいと頼んだハズだぞ?なんで壱番隊(バジんトコ)の副隊長がいて、場地がいねぇんだ?」
昨日の芭流覇羅での件は、マイキーにもドラケンにもアタシから報告してる。
タケミっち自ら芭流覇羅のアジトに行って、結果的に場地を連れ戻せてないワケだから、マイキーがイラ立つのは仕方ないけど……