第9章 参謀の策略
「ユウさんの期待に応えて見せます‼︎」
「期待なんてしてませーん」
アタシは「いい加減帰るよ」と先に病室から出た。
千冬は慌てながら、アタシの後をついてくる。
「……そういや、ユウさん」
「今度は何」
「芭流覇羅のアジトに確か、花垣って奴も来てましたよね?マイキー君のダチだっつー、あの…」
「何だ、意識あったの?」
てっきり完全に気絶してるもんだと思ってたけど。
「朧げスけど……マイキー君のお兄さんの話も…」
「…そう」
アタシは歩きながら、やれやれと肩を落とした。
圭介のヤツ、勝手にベラベラと……
「タケミっちなら、昨日マイキーが正式に東卍に入れたから、今じゃ弍番隊の隊員だよ」
「花垣も、場地さんを連れ戻そうとしてるんスね」
「そーみたいねぇ」
タケミっちは、マイキーから場地を連れ戻すよう頼まれてるワケだけど……
アタシはあえて、それは千冬には伝えなかった。
期待した千冬が「マイキー君も味方なら」って、暴走する可能性もあるし……今日のタケミっちみたいな無茶されたら堪ったもんじゃない。
「じゃ、アタシ帰るから。アンタは精々頑張って」
「一人で大丈夫スか?オレで良かったら送りますよ!」
「ヘーキヘーキ」
背中越しにひらひらと手を振って、アタシは千冬と別れた。
歩きながら、携帯を取り出して東卍のメンバー全員に向けてメールを打つ。
芭流覇羅からの宣戦布告、決戦の日時と場所、次の集会の時間……
「………」
場地が千冬にした事まで打って、そこだけ消した。
拉致られたんなら兎も角、千冬は自分から出向いたワケだし……態々全員に伝えるような事でもないか、と。
アタシが隠したところで、ムーチョから他の幹部には伝わるだろーけど……
「…あああもう‼︎圭介のバカッ!!!」
胸のモヤモヤにムカついて、アタシは大声で叫んだ。
近くに居た通行人達がギョッとしたから、すぐに走って逃げた。
裏切り者は切り捨てるべきなのに、こんなに思考を割いてる……
アタシの方がバカだと思って、それすらもムカついた。