第2章 参謀の仕事
ホンダのCB250T HAWK(ホーク)
バブーー!と鳴る排気音から〝バブ〟とも呼ばれるマイキーの愛機は、風を切りながら夜の街を走り抜けて行く。
「あ!そーだ」
「ん?」
今はバイクの上だから、マイキーは排気音に負けないような大声で話す。
「和月には言ってなかったよな?今日の集会、タケミっちも参加させっから」
「は?タケミっちを?」
何で?とまず思った。
東京卍會の集会に、メンバーじゃないヤツを参加させる……
タケミっちはマイキーのダチとはいえ、今日みたいな抗争の作戦に関わるような内容を、他人に聞かせて良いとは思えない。
「……もしかしてマイキー、タケミっちを東卍に入れるつもりなの?」
「うん。まぁ、今すぐってワケじゃねーけど」
「ふーん」
入ってすぐ愛美愛主との抗争に参加させんのは可哀想だから、タケミっちを入れるのはその後にするつもりらしい。
「総長の決定ならアタシは従うけどさ、それタケミっち本人は了承してンの?」
「してねーっつーか、まだ話してねー」
やっぱりそっか……でもマイキーが入れるって決めちゃったんなら、もう確定したようなモンだ。
マイキーは“オレが良ければ全て良し”な天上天下唯我独尊男だから。
「拒否られたらどーすんの」
「タケミっちは嫌がんねーよ。オレのダチだから!」
「すごい自信」
タケミっち、災難なヤツ。
初めて会った時と同じように、アタシはまた心の中で彼に同情した。
◇◆◇◆
東卍の集会場所である武蔵神社に到着。
神社の石階段下にある駐車場には、既にメンバーのほとんどが集まっている。
連なるランプ、重なる排気音、善良な人には異様で不快に見えるであろう光景は、アタシにとって心地良いものだった。
マイキーは、バイクの群れの中からパーちんの姿を見つけて、愛機に跨ってる彼の隣にバブを止めた。
「パー、お疲れ」
アタシが声をかけると、パーちんは「ああ……」とだけ返す。
パーちんは、当たり前だけど落ち着かない様子……きっと今も、親友の事を考えてるんだろう。
マイキーは、今パーちんに声をかける事はせず、ドラケンの方に目を向ける。