第9章 参謀の策略
アタシの言葉に、千冬はポカンとした顔をする。
めっちゃ驚いてる……アタシが共感すんのが意外だったみたい。
「え?え?……ユウさんも、場地さんの事信じて…?」
「んなワケないでしょ。アタシ、圭介に殴られてンだよ?」
「………」
信じてたかったけど、信じられなくなった。
アタシを殴った、タケミっちを殴った、千冬を殴った……何より、マイキーを殺すと言った。
そんな場地をもう、仲間と呼ぶ事は出来ない。
ムーチョにも諌められたし……アタシは参謀として、都合の良い考えは持つべきじゃない。
「けど……」
アタシは昨日と今日見た、場地の姿を思い浮かべる。
そして、違和感に首を傾げた。
「どーにも変なんだよねー。圭介が本当に東卍の敵になったんなら、言ってる事とやってる事が合ってないって言うか」
アタシはそう話しながら、違和感を一つ一つ思い出していった。
アタシ達が芭流覇羅に囲まれた時、場地は態々アタシに近付いて「失せろ」と言った……言い方は煽りのソレだったけど、アタシ達を逃がそうとしたようにも見える。
一虎がアタシを痛め付けようとした時も、「勿体ない」なんて今思えば変な理由付けて止めてたし……
今日の踏み絵に千冬を選んだのだって、今まで自分に付いてきた千冬が、自分を追って東卍を抜けるのを防ぐ為だったのかも……っていうのは、都合良く考え過ぎかな?
「……圭介はアタシを殴ったけど、今思えば集会直後のあの時だったから、絶対に誰か止めに入るってわかってたハズなんだよね」
馬鹿だからそこまで考えてなかったって可能性もあるけど、アタシを本気で脅したかったなら、一人の時を狙うのが一番有効だ。
「確かに……そん時は、ペーやん君が止めに入ったんスよね」
「うん。8・3抗争の事で、ペーやんはずっと肩身狭い思いしてたけど……あの時『隊長の暴走から参謀を守った』事で、仲間からの信頼を取り戻しつつある」
「!まさか、場地さんはそれを狙って⁉︎」
「だとしたら、とんだピエロだよね」
表情を明るくする千冬に、アタシはふっと笑みを溢した。
どれも、都合良く考え過ぎた話かもしれないけど……何故か、そう考える方がしっくりくる。
──でも