第9章 参謀の策略
アタシが言った事を想像したのか、タケミっちは顔を青くしてゴクッと喉を鳴らす。
「…………」
「…………」
「黙ってないで何とか言え」
「すんませんッしたァァ‼」
タケミっちは、全力でアタシに土下座した。
アタシは蹲んで、地面に擦り付けられてる金髪頭をペシペシ叩く。
「タケミっちはもう東卍の一員なんだから、ちゃんと自覚して。新人が参謀に尻拭いさせるって、あり得ないでしょ」
「うう…」
「次は、容赦なく捨て置くからね」
「っ、ハイ!本当にすいませんでした‼︎」
「よし」
タケミっち叱ったら、ちょっとスッキリした。
アタシが「もういいよ」とタケミっちの肩をポンと叩くと、彼はおずおずと顔を上げる。
地面に土下座してた事で、タケミっちのボンタンは砂まみれになってた。
「じゃ、アタシはそろそろ中に戻るけど……」
もう千冬の手当ても終わった頃だろうと、アタシは病院の方へ目を向ける。
「説教も済んだし、タケミっちはもう帰っていいよ」
「は、はい…」
「圭介を連れ戻すにしても、やり方はちゃんと考えなよね」
アタシはクルッと踵を返して、病院の方へ戻って行く。
後ろでタケミっちが頭を下げる気配がして、そのまま外へと歩き出してく……
「……タケミっち!」
それを、アタシは呼び止めた。
「?」
タケミっちがアタシを振り向く。
──“あの日”の話、聞いたんでしょ?
「………」
それを、訊いてどうする。
「………」
「ユウさん…?」
「…あんまり、友達に心配かけちゃダメだよ」
「うっ!き、気を付けまーす」
タケミっちは、頭を掻きながらヘラっとわらった。
再び外へと歩いてくタケミっちの背中を見つめて、アタシはかぶりを振る。
早く中に戻ろうと、アタシは病院へ向かう足を速めた。
「………」
思い出したくもない光景を、訊いてどうする。
◇◆◇◆
病室に入り、千冬が横たわるベッドの脇に立つ。
怪我はどれも軽傷で、脳にも異常は無く、腫れた右目も眼球は無事らしい。