第9章 参謀の策略
「ハァー、疲れた」
溜息と共に出た本音に、タケミっちも「そうっスね…」と苦笑った。
「…そーいえば、ユウさんの電話の相手って、ドラケン君じゃなかったんスね?」
「そ。アタシが突入する前に連絡してたのは、ドラケンじゃなくて、東卍の伍番隊隊長だったんだよ」
ついでに説明してやろうと、アタシは今回使った作戦の内容をタケミっちに話した。
「アタシが用意してた保険は、東卍全体じゃなくて、伍番隊だけ。そんで内容は『30分連絡しなかったら突撃して』じゃなくて、『アタシが空メール送ったら突撃して』だった」
そもそも何の準備も無しに決戦なんて仕掛けるワケないけど……一虎は、「コイツならヤりかねない」と思ってくれたかもしれない。
多分、2年前のアタシならヤってた。
アタシが話した作戦に、タケミっちは「ほえー」なんて間抜けな声を出す。
その後「ん?」と少し考えるような間を置いて、ハッと目を見開いた。
「つまり、芭流覇羅のアジトの中でユウさんが言ってたことは、半分ハッタリだったって事スか⁉︎」
「声が大きい!」
「でもそんな、もし芭流覇羅が乗ってきてたらどーなってたか…‼︎」
「乗らないよ」
「えっ?」
少なくとも、東卍との決戦を控えてる今は、ね。
「な、何で…そう言い切れるんスか?」
「半間の、今までのやり方からわかる」
「?」
よく分からないと言いたげなタケミっちの顔を見て、アタシは一つ溜息を吐く。
「腹立つからあんま話したくないけど、簡単に教えたげる」
「あ、アザーッス…」
ヘラヘラと頭を掻くタケミっちを見つつ、アタシは説明を始める。
「芭流覇羅は、半間が東卍を潰す為に作ったチーム」
「!」
「わかる?半間は、チームをデカくする為に東卍を狙ってンじゃなくて、東卍を潰す為にチームを作ったの」
似てるようで、大きく違う……芭流覇羅というチームの異質さ。
「半間の目的は…東卍を潰すこと?」
「そ。芭流覇羅をデカくすんのも、戦力を集めんのも全部ね」
場地や一虎を利用するのも……
「そうやってネチネチ築き上げられた芭流覇羅が、ついに東卍へ決戦を宣言した……つまり、もう向こうは東卍を潰す算段がついてるって事でしょ」