第9章 参謀の策略
アタシは、場地がした事をムーチョに伝える。
「圭介のヤツ、芭流覇羅のアジトに千冬を呼び出して、ボコボコにしてた」
少し迷ったけど……今隠しても、千冬の怪我は隠せないし、いずれ知られる事だから。
《“踏み絵”か》
「!察しがいいね」
《クソ共の考えそーな事だ。……場地がそれに従ったっつーなら、もう言い逃れは出来ねーぞ》
「………」
《ユウ……オマエも、マイキーも、今度こそ腹くくることだな》
ムーチョの厳しい言葉が、耳に痛い。
それは、アタシが場地を裏切り者と切り捨てられない証拠だった。
《幼馴染だとかは関係ねー。東卍で裏切りは御法度、いつもテメーが言ってる事だろ》
「……わかってるよ」
マイキーを裏切ったヤツに、アタシは容赦しない……わかってるけど……
アタシは、遠慮がちにこちらの様子を窺うタケミっちに目をやる。
今、この場で話す事じゃないか……
「ごめん、この話はまた後で……アタシ、千冬を病院に連れてってやんなきゃだから」
《……ああ》
「あ、火炎瓶は危ないから触らず置いといて。後でアタシが処分する」
(火炎瓶は本気だったの⁉︎ユウさん怖ええ‼︎)
ムーチョとの通話を切り、アタシは携帯をポッケにしまう。
「タケミっち、この後時間ある?」
「え?時間?…あります、けど」
「じゃあ、今から千冬病院連れてくの付き合ってくれる?タケミっちにも話したい事あんの」
「…わかりました」
アタシの誘いに、タケミっちは頷いた。
アタシはもう一度千冬の体を背負い直して、再び病院目指して歩き出した。
◇◆◇◆
病院にたどり着き、千冬を手当てしてもらってる間、アタシはタケミっちを連れて外に出た。
病院の中でうるさくするワケにはいかないから。
ピッ ガコン
自販機でコーラを買って、「ん」とタケミっちに手渡した。
「アザッス」
プシュとプルタブを開けて、タケミっちはすぐにコーラを口にする。
アタシも自分の分を飲んだ。
変に気ィ張ってたせいでカラカラだった喉に、炭酸の刺激が弾ける。