第9章 参謀の策略
芭流覇羅の拠点からある程度離れた後、アタシはそのまま千冬を連れて行く為に病院へ足を進める。
その途中で、タケミっちに敦くん達に連絡するよう伝えた。
「敦くん慌ててたし、心配してたよ」
「すいません…」
携帯を取り出して、タケミっちは敦くんに電話をかける。
電話口で「悪かった」って何度も謝るタケミっちを見てるうちに、ようやくアタシも胸中を落ち着ける事が出来た。
「ふー……」
アタシは一つ息をついて、千冬の体を背負い直す。
男一人はさすがに重いけど、まだなんとか運べる重さで良かった。
「あ、そうだユウさん!ユウさんも!」
「ん?」
「ユウさんも、早くドラケン君に連絡しないと、東卍が芭流覇羅に突撃しちゃいますよ‼︎」
「あ、忘れてた」
「そーだそーだ」と呟きながら、アタシは一旦立ち止まって自分の携帯を取り出す。
「ごめん、千冬。少し待ってね」
千冬に悪いと思いつつ、こっちはこっちで待たせちゃってるから先に電話をかけることにした。
「………」
プツと、通話が繋がる音がする。
「もしもし、ムーチョ?」
《遅え》
「ごめーん」
(え?“ムーチョ”???……ドラケン君じゃなくて?)
戸惑ってるタケミっちを横目に、アタシはムーチョに状況を話す。
「さっき、無事に抜けた。タケミっちも、アタシも無傷」
《なんだ、無駄骨になっちまったな》
「ごめんね。でもお陰で、アタシは安心して突入出来たよ。ありがとね」
《それが仕事だからな。……集めた奴らはもう解散すんぞ》
「うん。みんなにも、今度埋め合わせするって謝っといて」
《場地はどうなった?》
「!」
ムーチョから投げかけられた問いに、アタシは思わず喉を詰まらせてしまった。
《……そうか》
「!まっ、まだ何も言ってないケド」
《テメーの反応でわかる》
「………」
アタシってそんな分かり易い?気を付けなきゃ……
《向こうで何があった?》
「伝えてた作戦通り、タケミっちは無傷で連れ出したし、決戦までは余計な手出ししないよう約束も取り付けた。時間と場所はあっちが指定してきたけど、これは後でメールする」